「 オン 」飛躍の年を支えた3つのアプローチ。ゼンデイヤ起用やロエベとのコラボも
ロエベとのパートナーシップは5シーズン目に突入
さらに、オンはスペインのラグジュアリーブランド、ロエベ(Loewe)とのパートナーシップを継続している。2022年にはじまり、現在5シーズン目を迎えているこのコラボレーションでは、LVMH傘下のロエベとしては珍しい共同ブランドロゴを採用し、両ブランド間の深い信頼と連携を示した。「どちらのブランドも職人技とイノベーションで知られているので、それらを称えるものをロエベとともに作りたかった」とマウラー氏は述べた。「フットウェア、特にランニングシューズは、今でも手作業に支えられているビジネスだ。一足を構成するパーツの数は50を超え、それらが熟練した職人の手によって細心の注意を払って組み立てられている。ほかとは違うこうした細部のこだわりによって、お客さまが期待するパフォーマンスと品質を提供できるのだ」。 5シーズン目を迎えたLOEWE x On 最新のロエベ×オン(On x Loewe)コレクションは、オンの特徴的なテクニカル素材とパフォーマンス重視のデザインを、ロエベのラグジュアリーな美学と融合させ、機能的かつトレンドも取り入れたアイテムを提供している。このパートナーシップは、長期的な関係を築くことで両者が創造性の限界を押し広げ、新しいオーディエンスにリーチすることができるという、オンのコラボレーション戦略を完璧に反映している。また、このコラボレーションアイテムの量を考えると、成功のためにはある程度の手腕も必要だ。
トレーニングとアパレルでの成長を加速
さらに、オンはコミュニティとのつながりを深め、新しいカテゴリーに進出することをめざしている。具体的には、ライフスタイルとトレーニングのカテゴリーの製品に力を入れはじめた。3月には、トレーニングにフォーカスした初のシューズであるクラウドパルス(Cloud Pulse)を発売した。若い世代が、より長い時間をジムで過ごすようになり、フィットネスをライフスタイルの一部として取り入れているのを受けて、オンはこの成長分野を獲得するチャンスを見いだした。「当社はランニングブランドとして知られているが、2025年に向けてはトレーニングの分野に力を入れていく」とマウラー氏は語った。 今後について、マウラー氏はオンの優先事項を明確にしており、そこにはアパレルと小売の店舗面積拡大にあることを明確にしている。2024年第3四半期の売上はシューズが95%、アパレルが4.2%で、残りがアクセサリーだった。オンの長期目標は、アパレル、直営店舗、そして中国市場でそれぞれ10%の売上比率を達成することだ。「2025年はアパレルが大きな焦点になるだろう」と同氏は言う。「当社の衣料品ラインを本当に成功させるためには、自社の店舗で適切に商品を紹介する必要がある」。オンは来年、ファッションの最先端都市や旗艦店に重点を置き、新規店舗を約20店舗オープンする予定だ。「最近、シカゴとニューヨークにこれまでで最大の店舗をオープンしたが、反響は信じられないほどだ。重要なのは、顧客が真にブランドを体験できる空間を作ることだ」とマウラー氏は語った。 小売業界に影響を与えるマクロ経済の課題があるにもかかわらず、オンの財務状況は依然として良好だ。同ブランドはコストを効果的に管理しながら、売上を着実に伸ばしてきた。効率的な経営への注力が、拡大への投資を行いながらも利益を維持する原動力となっている。「前年比で20~30%の成長を遂げている場合、大幅なコスト削減策は不要だ」とマウラー氏はいう。「当社は健全な利益率を維持するために、コストよりも収益を速く成長させるという、スマートな規模拡大に力を注いでいる」。