ジャパネットの事業承継 親子が衝突したら距離を120キロ離す
ファミリービジネス(同族経営)研究をライフワークとする、星野リゾート代表の星野佳路氏と「後継社長の育成」及び「バトンタッチ」について考えるシリーズ。ジャパネットたかたの創業者、髙田明氏と、明氏の長男で2代目社長の髙田旭人氏の2人を取材した。星野氏と共に研究に取り組む、東京大学の柳川範之教授がポイントを解説。第1回は、後継者である旭人氏へのインタビューから。 【関連画像】星野リゾート代表・星野氏は、ファミリー企業の4代目経営者であり、ファミリービジネス研究をライフワークとする(写真=栗原 克己) (編集・構成/小野田鶴) 星野佳路氏(以下、星野氏):ファミリービジネスの事業承継は、うまくいかなかったケースばかりが報道されがちで、理想となるモデルケースの提示が足りないと、私は考えています。この点、ジャパネットたかたと、そのグループ企業を統括するジャパネットホールディングス(以下、ジャパネット)の事業承継は、驚くほど理想的で、ぜひモデルケースとして記録に残したいと考え、取材をお願いしました。 今日は、引き継いだ側の旭人さんへの取材ですが、まず驚かされたのは、このインタビューの聴衆として多くの社員が同席されていることです。 髙田旭人氏(以下、旭人氏):僕がインタビューを受けるとき、社内研修として、希望する社員に聞いてもらうという取り組みをしています。今日はオンラインを含めると40人が参加しています。 星野氏:事業承継の内幕は社員に明かせないと考える経営者が大半だと思います。 旭人氏:僕はそう考えません。社外に漏らしてはいけないこともあると社員は理解しています。星野さんも安心して、お話しください。 ●衝突はしても、人間味のある父 星野氏:では、本題に入りましょう。私は1991年に父から事業を引き継ぎましたが、ハードランディングでした。父と対立して一度は会社を辞めさせられ、その2年後に経営者として戻りました。それと比べると、旭人さんはずいぶんスムーズだったように見えます。 旭人氏:いや多分、星野さんとほぼ同じです。後継者には「衝突型」と「服従型」、そして「逃避型」という3パターンがあると、僕は思うんですが、それでいうと完全に衝突型でした。父とはかなり衝突しました。 星野氏:外から見る限り、そういう印象は受けません。髙田さんが後を継いだとき、ジャパネットは、かなり大きく、有名な企業でしたが、例えば、かつての大塚家具さんのように、親子の対立が社外に伝わってくることは全くありませんでした。つまり社内の議論で収まったということです。 旭人氏:確かにそうですね。父はすごく人間味があるというのでしょうか、昼に父から強く言われたことが原因で、僕が落ち込んでいると見るとだいたい、夜に電話をかけてきて「考え過ぎんでいいよ」と声をかけてくれるんです。 星野氏:なるほど。