飛べない鳥ペンギンにもちゃんと「竜骨突起」が…!鳥類の専門家が徹底ガイド 国立科学博物館の特別展「鳥」が100倍おもしろくなるマル秘鑑賞法
ダチョウの胸骨はぺったんこ
第3章以降は、いよいよ具体的な鳥たちの展示である。最初の第3章「走鳥類のなかま」は、古口蓋類という爬虫類と似た特徴の口蓋骨を持つ古い鳥の紹介コーナーだ。 ブースに入ると、巨大なダチョウの標本と骨格標本が最初に目に入る。現生鳥類最大種のダチョウは、体重が130kgを越える飛べない鳥。ここでの注目はやっぱり骨で、胸骨が平たいことに気づいてもらいたい。 鳥の胸骨には、たいてい翼を動かすための筋肉がつく竜骨突起と呼ばれるでっぱりがあるのだが、ダチョウの胸骨はそれがなくて真っ平ら。翼を強く羽ばたいて飛ぶ必要がないため、大きな筋肉がつく部分がなくてもよいからこんな形をしている。ただし、ダチョウにもけっこう立派な翼があって、とうぜん動かすことはできる。体を浮かせるほど力強く羽ばたくことできないが、求愛するときにひらひらと動かしてメスを誘うときに使うのである。
ペンギンは飛べないけれど
じゃあ、飛べない鳥は、すべてがダチョウのような平たい胸骨なのかと言えば、そんなことはない。次は第5章「陸鳥や水鳥のなかま」にあるペンギン大集合のコーナーへ移動して、アデリーペンギンの骨格標本を見てみよう。 ペンギンは飛べない鳥として有名だけれど、ちゃんと胸骨には竜骨突起があるのがわかるだろうか。彼らは空を飛ばないが、その代わり翼が変化したフリッパーをはばたかせて泳ぐ。水は空気よりも密度が高いので、力強く動かす必要があるから胸筋がとても発達しており、それがつく竜骨突起はかなり立派なのである。彼らにとっては、水の中を飛んでいるのと同じなのだ。それと同時に、ペンギンの祖先はかつては空を飛んでいたことも、この竜骨突起の存在が物語っているのである。 後編記事『オウギワシとフィリピンワシを見逃すな!鳥類の専門家が徹底ガイド 国立科学博物館の特別展「鳥」が100倍おもしろくなるマル秘鑑賞法』に続く。 特別展「鳥 ~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統~」 会期:2024年11月2日(土)~2025年2月24日(月・休) 会場:国立科学博物館 〒110-8718 東京都台東区上野公園7-20 開館時間:9時~17時(入館は16時30分まで)
柴田 佳秀(サイエンスライター)