飛べない鳥ペンギンにもちゃんと「竜骨突起」が…!鳥類の専門家が徹底ガイド 国立科学博物館の特別展「鳥」が100倍おもしろくなるマル秘鑑賞法
骨格の気管に注目せよ
さて、いよいよ本題に突入。第1章「鳥の起源と初期進化」では、絶滅した巨大鳥類のペラゴルニス・サンデルシの復元模型が一番の注目株なのは疑う余地がないが、ここではもっとマニアックに推したいものがある。それは鳥の骨格だ。骨格は身体機能がダイレクトに表現されているので、読み取ることさえできれば多くのことがわかって非常におもしろい。 ここではツルのなかまのタンチョウの骨格が、鳥の代表として展示されている。今回、特に注目してもらいたいのが喉から頸椎に沿って伸びる気管(赤い矢印)である。気管は、軟骨のパイプを多数の骨化したリングで補強した管で、喉から肺へつながる空気の通り道。その気管の下部には鳴管と呼ばれる部位があり、鳥の声は例外なくここから音が出る。 おもしろいことに、タンチョウの気管はとても長く、胸骨の中にとぐろ巻くように収まっている。この長い気管があるおかげで音が共鳴し、鶴の一声と呼ばれる非常に大きな声が生まれるのだ。管楽器のトランペットやホルンと同じ構造と思ってもらえればわかりやすいだろうか。今回の展示ではその構造がよく見えるので、是非確認してもらいたい。 タンチョウの隣には、大きな声で鳴くコハクチョウと、ほとんど鳴かないコブハクチョウの骨格標本が並んでおり、こちらも気管の長さに注目して見ると発見があるだろう。
世界の鳥の種類はスズメ目が圧倒的に多い
第2章は、「ゲノム時代の新しい系統と分類」という、ちょっと難しいタイトルのコーナーだ。要するに、ゲノム解析という遺伝子を使った分類法が現在は主流で、鳥展はそれに従った構成になっていますという話である。 このコーナーでひときわ目を引くのは、白い円柱がずらりと並んだ「多様性サークル」という展示だろう。生物の分類は階層構造になっていて、上から界、門、綱、目、科、属、種というカテゴリーで括られているのは、昔、学校で習った覚えがある方もいるだろうか。その中の「目」という括りについて、ゲノム解析で明らかになった系統順に並べてあるのがこの展示であり、鳥展の目次のような役割も担っている。 また、白い円柱は、その目に含まれる種数を示していて、棒グラフのようなものである。ここで注目してもらいたいのが、飛び抜けて種数が多い目がそれほどないことである。大体がドングリの背比べで、スズメ目だけが6,719種と飛び抜けて大所帯になっていることが、一目瞭然でわかるのがおもしろいところだ。なぜ、そんなに多いかは解説展示に書いてあるから読んでほしい。