箱根駅伝“山の妖精”は「やっぱり“神”になりたかった」城西大・山本唯翔の5区への思い「（青学大・若林宏樹に）記録が破られて正直悔しい」
神になれなかった理由
今井のタイムを超えられなかった悔しさはあったが、2年連続で現コースでの区間新を出し、チームの総合3位という結果に貢献する走りが出来たことで、満足感は大きかった。ただ、タイムは「神」に匹敵するものだったが、山本は「4代目・山の神」になれなかった。 「僕が神になれなかった理由は、今井さんの記録に2秒及ばなかったことだけじゃないです。僕は、記録を更新しても優勝のゴールテープを切ることができなかったので。そこが大きかったのかなと思います。それに改めて3人の走りを見ると、僕はまだそこに及ばなかった。 ただ、自分としてはやり切りました(笑)。自分の走りをして結果を残せたので、『まぁいいか。神になりたかったけど、それがすべてではない』と思えたので、それは良かったと思っています」
記録が破られるのは悔しいけれど
山本の前の5区区間記録を持っていた宮下隼人(東洋大―コニカミノルタ)は、テレビ解説をしていた目前で山本に自分の記録を抜かれて、「悔しさ」を感じたという。今年の第101回大会、今度は山本がラジオのゲストでその瞬間と向き合うことになった。 「今回はたぶん、自分の区間記録を抜かれるのを見届けることになりそうです。僕は5区で区間記録を出した時も、出せなかった時も、いい経験になりました。今回走る皆さんにも、5区でそういう経験をしてほしいなと思います」 そう言っていた戦前の予想通り、山本は、若林宏樹(青学大4年)の区間新を目の当たりにした。 「自分の区間記録が破られるのは正直、悔しいですが、若林君は、昨年も自分に次ぐタイムで走っているので、『神』認定してもいいと思います」 若林は現役を引退するが、陸上生活の締めとして最高の経験になったことだろう。 山本の名前は5区の記録から消えたが、5区の経験が、彼の競技人生において色褪せることはこれからもない。 〈宮下隼人編からつづく〉
（「箱根駅伝PRESS」佐藤俊 = 文）
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