箱根駅伝“山の妖精”は「やっぱり“神”になりたかった」城西大・山本唯翔の5区への思い「(青学大・若林宏樹に)記録が破られて正直悔しい」
山の神と呼ばれたいな
進学した城西大では、1年目から5区を任され、区間6位(73分03秒)という成績だった。 「その時から『山の神と呼ばれたいなぁ』と思っていたのですが、実際に走らせていただいて、もっと練習をすれば区間賞は獲れるというイメージができました。ただ、上の順位にいる人は上りの練習をしてきているのが見て分かったので、やるべきことはまだあるなと。 同期の鈴木芽吹選手(駒澤大―トヨタ)に5区で負けたのも悔しかったので、もう誰にも負けたくない、5区で絶対に勝ちたいという気持ちがより強くなりました」 2年の時は、予選会15位で箱根を走れなかったが、3年では予選会を3位で突破。神になるべく、しっかりと準備をしてきた。
速く山を上る秘訣とは…
春は平地での走力、スピードをつけるためにトラックの競技に積極的に参加した。本格的に山の練習をスタートさせたのは、夏合宿からだった。上りの練習は脚力強化になるという櫛部静二監督の考えから、山本だけでなくメンバー全員で朝、山を走った。 「みんな、イヤだと言いながらも走っていました(苦笑)。僕としては、夏に一緒に山を走れたというのがすごく心強かったです」 周囲からは、どうしたら上りを速く走れるのか、と質問されることがよくあったという。 「これをやっておけば、うまく山を上れるというのがあって。まず走る際、前傾姿勢を取るんですが、それにとらわれ過ぎてしまうと前傾になり過ぎて、うまく走れなくなります。もうひとつは腕振りですね。トラックとかで速い動きをする時は、腕を後ろに引くような動作がいいんですが、上りの時は逆で前に持ってくる方が速く上れるんです」 山本に言われた通りにすると、選手たちから「おぉー」という納得の声が上がり、ラクに上れるようになった。そうして、城西大は山で走力を磨いて第99回大会の箱根に臨んだ。
命名「山の妖精」
山本は13位で襷を受け、第96回大会で宮下隼人(東洋大)がマークした区間記録(70分25秒)を21秒更新する70分04秒で区間新記録を樹立。9位まで順位を押し上げた。だが、「神」とは呼ばれなかった。 「チームの順位(シード権)と自分の区間賞を目標にしていたのですが、この時は意外と速く走れたなという感じでした。ただ、タイム的にも、9位というチームの結果からしても、神になれるような感じではないと思っていたんです。 チームメイトからは『神だよ』と冷やかされたんですが、やっぱり神とは呼ばれない。その時、監督が考えて『山の妖精』と名づけてくれたんです。最初は恥ずかしくて嫌だったんですけど、徐々に浸透してきたので、それでもいいかなと思いました(笑)」 区間新を出して目標をクリアしたことで、4年生になった山本は5区から2区へと気持ちが揺らいだ。もう一度5区を走るなら、元祖「山の神」今井正人さんの記録(69分12秒/コースが現在とは若干異なる)を抜きたいと思ったが、一方で1年時に負けた鈴木を始め、各大学のエースと戦いたいとも思った。
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