どこも書かない「箱根駅伝 山の神」のつくり方…指導経験者が“ルール破り”の実情を激白
「試走は禁止? みんなわかっていますが、やっていない大学はほとんどありませんよ」 こう言うのは、かつて箱根路を走ったOBだ。 【写真】ドルーリー朱瑛里 海外流出を危惧する声…弁護士を通じ異例の要請 箱根大学駅伝は山上りの5区(20.8キロ)でこれまで幾多のドラマを生んできた。16.3キロの最高到達点まで約800メートルの高低差があり、その先は約150メートルの下り坂が待っているこの5区で、過去には今井正人(順大)、柏原竜二(東洋大)、神野大地(青学大)の3人が驚異的な走りで優勝に貢献し、「山の神」と呼ばれた。 箱根駅伝の関係者たちは、「山上りを制するものが箱根を制す」と言う。今年の大会も2位でたすきを受けた青学大5区の若林宏樹が区間賞で往路優勝を決めると、山下りの6区では野村昭夢が56分47秒の区間新記録で7区につなげ、総合優勝を確実なものとした。各大学の監督は、この特殊区間の選手を決めるのに一番苦労するという。 指導者経験もある冒頭のOBが言う。 「各大学の監督は夏合宿で長い坂のあるロードを走らせ、数人の候補者を選ぶ。その選手たちを箱根の山に連れて行き、車の少ない早朝に試走させるのです。最初はジョギング程度のスピードで数キロ上らせ、途中から全力に切り替えさせる。フォームやスピードを見て1人から3人に絞る。その後、山上りに特化したトレーニングを行い、秋に再度試走します。山下りも同じです」 箱根駅伝を主催する関東学連は箱根路の試走を禁止している。車が行き来する一般公道を走ることはとても危険で、特に5区、6区は道幅が狭く、昭和31(1956)年には箱根の山を試走していた専大の選手が交通事故で死亡している。 「禁止されていても、あれだけの坂ですからね。実際に走ってみなければ指導歴が長い監督でも適性はわかりません。候補の選手に3、4回試走させる大学もあると聞きましたが、気持ちはわかります。それにしても、ここ数年でシューズがよくなり、選手の走り方もよくなったことで記録が伸びている。以前は6区の試走を終えると、脚がガタガタになって1週間以上は練習を再開できなかったが、今は2、3日もすればジョギングができる。血液検査で筋肉の損傷程度が以前より小さいそうです。だからといって、何度も箱根の山を試走させられたら選手はたまったもんじゃないですよ」(前出のOB) 山の神は、禁止の試走なしには生まれないのだ。 ◇ ◇ ◇ ところで、駅伝といえばケニア人留学生の活躍が話題になるが、彼らはどのような待遇を受けて学生生活を送っているのか。その「知られざる実態」とはーー。 ●関連記事【もっと読む】…では、それらについて詳しく報じている