乳がん女性たちの大きな苦痛「外見の問題」。乳房再建が進まない理由とは?
必要性が増す乳房再建、しかし「認知度が低い」という現状が
乳房再建は、乳房を失った人全員が行う治療ではないが、選択肢のひとつとして望む人に提供される社会であってほしいと思う。 しかし、手術後のアピアランスケアの意識調査*4では、「乳房再建について言葉もどんな治療法かも知っていた」人は16%にとどまった。乳房再建の認知度の低さがうかがえる。 一方で、日本での乳がんの術式がここ数年で変化してきており、乳房再建の必要性がますます増している。というのも、以前は乳房を残して部分的に切除する「乳房温存手術」が60%近くを占めていた。けれども、近年では乳房をすべて切除する「乳房全摘手術」が「乳房温存手術」を上回っている。 *4 アッヴィ合同会社アラガン・エステティックス、E-BeC共同実施「乳がん手術後のアピアランスケアに関する意識調査」
保険適用になっても実施率はわずか約13%
しかし、日本の乳房再建手術の実施率は低いと言わざるを得ない。日本の実施率は12.5%*5。それに対して米国40%、韓国53%と比べても低い現状だ。 *5 厚生労働省「第9回NDBオープンデータ」より 日本の乳房再建は、自分の体の組織を使う自家組織再建も、インプラント(人工乳房)を使う再建も現在、保険適用になっている。 インプラントの乳房再建では、健康保険と高額療養費制度を利用することで自己負担は約9万~14万円程度。しかし、インプラントの再建が保険適用になった2013年から11年経過した今でも、乳房再建率は伸び悩んでいる。
その理由について、乳房再建の患者支援団体E-BeC理事長の真水美佳さんは、「地方と首都圏の情報格差が大きいです。地方在住者からは、乳房再建の情報は少なくネットで探しても地方での再建の情報はほぼ得られない。また、地方では再建できる病院が限られていて、時間と労力、費用負担が大きいなどという声があります。 さらに、地方では、乳がんを手術治療する乳腺外科の医師が乳房再建をすすめてくれないため、患者としては選択肢にならないことも大きいのです。背景には、乳腺外科医や形成外科医不足の問題も。現実に、地域に一人熱心な乳腺外科医や形成外科医がいると環境が整うという現状もあります」と話す。 情報格差の問題は、社会の無理解にも影響する。地方在住者の声からは、 「夫から今さらなぜ胸が必要なんだと言われた」 「友人から再建しなくてもいいのではと言われる」 「職場に伝えても乳房再建では休む理解が得られない」 「いちばん近い再建可能な病院まで往復7時間かかる」 「地方では病院が限られており、再建費用に加え、往復の交通費もばかにならない」 などという家族や周囲の無理解、医療環境の問題もあり、乳房再建の選択が増えていかない理由になっている。