乳がん女性たちの大きな苦痛「外見の問題」。乳房再建が進まない理由とは?
望む人が治療できる社会にするために
乳がんを告知され、乳がんの手術を受ける患者さんにとって、手術で乳房を失っても取り戻せる選択肢があることは、つらい治療に立ち向かう希望につながるという声も少なくない。 乳がん患者さんを対象にした調査*6 では乳房再建をしたことで「乳房に対する満足度」「心理社会的健康観」「性的健康観」は大きく改善され、患者さんの乳がん治療後の満足度やQOLの向上に役立っていることが報告されている。 乳房再建をしたいと望む人が行える社会になるためには、解決策のひとつとして、「社会に広く乳房再建手術がどういうものかを知ってもらうこと。そして主治医となる乳腺外科医、さらに医療スタッフから、患者本人だけでなく家族にも乳房再建の情報を伝えてもらうことも大切です」と真水さん。 *6 一般社団法人日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会 Oncoplastic Breast Surgery 2019; 4(2):45-52.
真水さんが代表を務めるE-BeCは、企業*7 と共同で、10月8日を「乳房再建を考える日」として乳房再建の認知・理解向上を目的に記念日登録をした。10月はピンクリボン強化月間で、乳房再建のシンボル、クローズドリボンのロゴが数字の8の字に見えることから10月8日に設定されている。E-BeCのホームページでも乳房再建の情報を詳しく紹介している。 また、望む人がどの地域でも乳房再建を可能な社会を目指して、より多くの人に乳房再建手術を知ってもらいたいという願いから本も出版された。乳がん手術で損なわれた乳房を再建した女性たちの写真集だ。写真家、蜷川実花さんがさまざまなストーリーを持つ12名の女性たちの姿を撮影している。 *7 アッヴィ合同会社アラガン・エステティックス
取材・原文/増田美加さん 1962年生まれ。女性医療ジャーナリスト。約35年にわたり女性の医療、ヘルスケアを取材。自身が乳がんに罹患してからは、がん啓発活動を積極的に行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』ほか。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員 イラスト/かくたりかこ