正念場のW杯最終予選に追い風?! 森保Jは司令塔とエースFWを欠く首位のサウジに勝てるのか…カギを握る先取点
日本もセンターバックの二枚看板、吉田と冨安健洋(23・アーセナル)を欠く。攻撃陣ではオマーンに借りを返した第6戦で流れを変えたドリブラーの三笘、新天地で大ブレークしたFW古橋亨梧(27・セルティック)も負傷で選外となった。 条件はほぼ同じ。だからこそ先制点が勝敗を左右する。 くしくもサウジアラビア、日本ともに総失点はグループBで最少の3。ゴールへの筋道をなかなかつかめない日本が、例えば今年から担当コーチを新たに入閣させ、改革を施しているセットプレーで堅守をこじ開ければ先行逃げ切りの形に持ち込める。 その場合は中国戦に続いてセンターバックを担う谷口彰悟(30・川崎フロンターレ)、板倉滉(25・シャルケ)の奮闘を抜きには語れない。真価を問われる90分間だとわかっているからこそ、谷口は板倉とのコンビネーションを密にしていくと誓った。 「より細かく、丁寧にやらないといけない。わかっていても、それでもしつこく言い合っていく。隙を見せず、水も漏らさない作業を90分間やり続けないといけない」 もっとも、不安に駆られる材料だけがあるわけではない。 リードが2点に広がった状況もあり、森保監督は中国戦の後半28分からシステムを4-2-3-1へスイッチ。ゴールこそ奪えなかったが、トップ下へ投入された久保建英(20・マジョルカ)を中心に、相手ゴールへ迫っていく圧力が明らかに増した。 さらにMF原口元気(30・ウニオン・ベルリン)を左、MF堂安律(23・PSV)を右に投入した後半40分をもって、交代枠5をすべて使い切った。 新型コロナウイルス禍で従来の3が2増となった交代枠を、森保監督は余らせるケースが多かった。挙げ句、ホームにオマーンを迎えたアジア最終予選初戦で敗れ、批判される材料のひとつになった。一転して、この日の公式会見ではこんな言葉を残している。 「交代枠の使い方に対する評価はみなさんにお任せしたいが、手応えとしてはチームとしてプラスになる使い方ができているのではないかと思っている」 5枠のひとつを決まって左サイドバックで使い、長友を中山雄太(24・ズヴォレ)に代える采配への批判は絶えない。サウジアラビア戦でも繰り返されるだろう。 それでも久保や堂安、原口、FW前田大然(24・セルティック)らゴールへの飢餓感を前面に押し出すリザーブ陣が同点の均衡を破るだけでなく、先制されると必ず黒星へと至る、これまでの負のスパイラルをも食い止める大仕事を成し遂げるかもしれない。 6勝1分けと無敗をキープするサウジアラビアは、日本に勝てば2大会連続6度目のワールドカップ出場が決まる。同日に敵地でオマーンと対戦するオーストラリアの結果次第では、日本は自動的に出場権を手にできる2位からも転落する。 「いろいろな思いはあるが、アジアで同じ相手に2度も負けられない。ただ、一番強く思っているのは、私たちがワールドカップに行きたいかどうかとなる」 ミス絡みで敵地で白星を献上した第3戦の雪辱を期すだけではないと、森保監督は力を込めた。日本の先発が発表された時点で、ネット上には批判が殺到するだろう。90分間を終えた段階でそれらを覆せるかどうか。日本代表を背負う選手たちの底力と、何よりも采配を含めた指揮官の胆力が、負けられない大一番で問われようとしている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)