じつは、「起こりそうもない」ときに起きやすい…低体温症を起こしやすい「意外だけど、納得の条件」
低体温症にかかりやすい条件の人
低体温症へのかかりやすさという点で、次のような人はより不利となります。 高齢者は、寒さに対する感受性が鈍くなり、震えによる熱産生能力も低下するなど、寒さに対する防衛体力が低下しています。筋力や持久力といった基礎体力も低下しています。 若い頃に登山をしていた人では、体力に優れていた当時の感覚と、体力が低下している現在の感覚とのずれに気づかず、無理をしてしまうことがよくあります。 子どもも寒さには不利です。体熱は、身体の体積に対して表面積が大きいほど奪われやすくなるので、体格が小さい子どもほど寒さには弱いのです。筋力も未発達なので、強風に抵抗して歩く能力も弱いといえます。 このような意味では、体格が小さくて体脂肪の少ない女性も、低体温症に対して不利だといえます。
夏でもおこる
今回のテーマである低体温症の冒頭で触れた「トムラウシ山での遭難」は、きわめて稀まれにしか起こらない気象条件にたまたま遭遇して、運悪く起こったものかといえば、そうではないのです。なぜならば、このような荒天は北海道に限らず、本州の高山でも一夏に何度かは起こっているからです。 また、気温が低く、しかも濡れと強風にさらされる状況は、雪の降る冬よりも、冷たい雨が降る春や秋に多く起こります。実際に、現代の低体温症による事故統計を見ると、冬山よりも春山や秋山で多く起きているのです。 たとえばゴールデンウィーク頃の北アルプスでは、冷たい風雨に見舞われたことによる低体温症遭難がよく起こっています。高山の稜線上で暴風雨やみぞれに遭遇すれば、防水透湿性のジャケットを着ていても、下着までびしょ濡れになってしまうこともあります。こうなると体温は一気に奪われ、短時間のうちに低体温症を引き起こします。これは秋山でも同じです。 地域にもよりますが、2000m以上の山では、春でも5月までは雪が降ります。秋であれば10月を過ぎると雪が降ります。春山や秋山では、雨、みぞれ、雪への対応が必要となるので、冬山以上に注意深い装備への配慮が必要となります。