じつは、「起こりそうもない」ときに起きやすい…低体温症を起こしやすい「意外だけど、納得の条件」
登山人口は年々増加の一途をたどり、いまや登山は老若男女を問わず楽しめる国民的スポーツになっています。いっぽう、登山人口の増加に比例して山岳事故も増えており、安全な登山技術の普及が喫緊の課題となっています。 【画像】夏と冬の心拍数…こんなにも違う。熱中症の兆候も 運動生理学の見地から、安全で楽しい登山を解説した『登山と身体の科学 運動生理学から見た合理的な登山術』(ブルーバックス)から、特におすすめのトピックをご紹介していきます。 前回、事故事例とともに、兆候などをご紹介した低体温症ですが、今回は、低体温症の兆候を感じたときの対処法をご紹介していきます。 *本記事は、『登山と身体の科学 運動生理学から見た合理的な登山術』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
低体温症の予防
前にご紹介した「深部体温の低下にともなって現れる症状」のAの項目にある「寒気」、Bの項目にある「震え」などの初期症状が出た段階で、自分で適切な対処に努めます。 具体的には、濡れや風を防ぐためにジャケットを着たり、予備の衣服を着て保温に努めます。吹きさらしの場所からは一刻も早く退避して、風雨の影響の少ない樹林帯などに避難します。行動能力を落とさないため、そして身体を温めるための熱源という2つの意味で、エネルギーの補給(特に炭水化物)も重要です。 低体温症の進行は、自覚しにくいものです。また、気づいたときには自力では対処できなくなっている場合もあります。低体温症が起こりそうな状況では、メンバー同士がお互いに注意し合って、「深部体温の低下にともなって現れる症状」にあげた症状が起こっていないかを絶えず確認することが必要です。 低体温症にかかってしまった場合には、風雨の影響がなるべく少ない場所で、非常用のシェルター(ツェルトザック)をかぶって、外界からの影響をできるだけ遮断します。 乾いた衣服があれば着替えさせて、体温の喪失を防ぎます。 そして、温かいお湯を入れたペットボトルなどを、腹部や鼠径部(そけいぶ)などにあてて温めます(やけどには注意してください)。