かつて「星雲」と呼ばれたアンドロメダ銀河 ハッブルの発見から100周年
アンドロメダ銀河(M31)は、私たちが暮らす銀河系(天の川銀河)の最も近傍にある大型銀河だ。地球からの距離はわずか250万光年で、約1兆個もの星が集まっているといわれる。 【画像】発見時には「アンドロメダ星雲」と名づけられていた「アンドロメダ銀河」 だが、最初からそう考えられていたわけではない。ちょうど100年前の1924年11月23日、当時35歳だった米国の天文学者エドウィン・ハッブルが画期的な発見を米紙ニューヨーク・タイムズに発表した。それまで天文学者に「アンドロメダ星雲」と名づけられていた、夜空にぼんやり光って見えるこの天体が、実は銀河系の中にある星雲ではなく、外にある天体だと主張したのである。実際、それはおびただしい数の星で構成された、別の銀河だった。 その日を境に、宇宙のスケールはそれまでの認識より劇的に拡大し、今なお広がり続けている。1929年にハッブルは、すべての銀河が地球から遠ざかっているように見えること、その速度は地球との距離に比例して増すことを発見した。すなわち宇宙は膨張しているのである。アルバート・アインシュタインの方程式は正しかったというわけだ。 ■銀河同士の衝突・合体 今では、アンドロメダ銀河は天の川銀河とよく似た渦巻銀河であり、天の川銀河の最も近くにある巨大銀河であり、やがて天の川銀河と衝突することまでわかっている。2つの銀河は時速40万kmで互いに接近しており、約40億年後には私たちの銀河系がアンドロメダ銀河に飲み込まれるだろう。 もっとも、その頃には太陽は主成分の水素を使い果たし、赤色巨星へと膨張して地球を飲み込んでいるか、そこまで至っていなくとも海を蒸発させてしまっているはずだ。また、銀河同士が衝突しても、星と星の距離は非常に離れているため、星同士が衝突する可能性はほとんどない。
最新の研究結果と夜空での見つけ方
■最新の理論 2019年に発表された研究論文によれば、アンドロメダ銀河はすでに数十億年かけて複数の小さな銀河を飲み込んでいるという。 また、2023年に提唱された理論は、天の川銀河とアンドロメダ銀河は共にこれまで想定されていたよりはるかに広大で、両者の間にほとんど隙間がない可能性があるとしている。その証拠とされるのは、天の川銀河を取り巻くハロー(銀河ハロー)と呼ばれる領域で見つかった約200個の古い星のうち、最も遠い星が地球から100万光年以上離れた位置にあることだ。これは、アンドロメダ銀河とのほぼ中間地点にあたる。 今年9月、この理論をさらに発展させた研究結果が発表され、天の川銀河とアンドロメダ銀河の衝突はすでに始まっている可能性が示唆された。 ■夜空に浮かぶアンドロメダ銀河、探し方のコツは 宇宙には2兆個もの銀河が存在すると推定されているが、アンドロメダ銀河はその中でも最も見つけやすい。そして、夜空に見ることのできる最も遠い天体でもある。米航空宇宙局(NASA)が公開した美しい写真でしか見たことのない人は、今が絶好のチャンスだ。月明かりのない漆黒の闇夜なら肉眼で、そうでなくても双眼鏡があれば、誰でも見つけられるだろう。 暗くなってから北の空を見上げ、M字型のカシオペヤ座を見つけよう。次に天頂付近から南西の方角へと目を動かすと、ペガスス座の「大四辺形」(秋の四辺形)が見つかるはずだ。カシオペヤ座のMの中央の星と左側の山の頂点の星を結んだ先に、大四辺形を形づくる明るい星の1つ、アルフェラッツ(アンドロメダ座アルファ星)がある。アンドロメダ銀河は、カシオペヤ座とアルフェラッツの中間あたりにある。 双眼鏡で覗いても、ぼんやりとした光の塊にしか見えないかもしれないが、人間の目は周辺視野が明るさに最も敏感だ。銀河は非常に明るい天体なので、少し横を向いて視野の端で見てみよう。直視するよりも多くの発見があることに、きっと驚くに違いない。
Jamie Carter