「息子は自分のからだの大切さを知っている」――幼稚園の性教育、子どもの学びと親の衝撃 #性のギモン
子どもたちの「イヤだ」は無視されない
「からだのはなし」をしているのは和光幼稚園・小学校の校園長、北山ひと美先生だ。対象の園児の保護者には、この授業内容の説明会も行っている。北山先生は「からだのはなし」についてこう語る。 「この授業をすると、子どもたちから『友だちに触られてイヤだった』という話も出てきます。相手が大人の場合もあります。親からすればかわいいからすることでも、子どもがイヤだと思っていることはあります。『からだの権利』を学ぶことで、子どもはそれに反することが起こると『あれ?』と疑問を持ちます」 こうした園児との日々のやりとりは、担任によって作成された「学級通信」を通して保護者に共有される。そして毎月行われている「親和会」という保護者会で話し合うなどして、対処していく。子どもたちの「イヤだ」の意思表示は無視されない。 和光幼稚園では、プールの際の着替えは男女の間にパーテーションを立てて行っている。しかし「からだのはなし」で着替え場所のことが話題になった時、同性同士でも一緒に着替えるのは「イヤだ」という子がいるとわかった。そこでその場合は、簡易的な「個室」で着替えることができるようにした。
自分で「イヤ」と言えない乳幼児は?
自分のからだの権利が侵された時、「イヤだ」と言えればいいが、言えないこともある。逃げられないこともある。その時大事なことは「どうしようもなかったとしても、あなたは悪くない」ということだと北山先生は言う。 北山先生は講演先でたびたび過去の性被害の告白を受ける。ある女性は幼稚園児だったころ、通っていた習いごとの先生がいつもお尻を触ってくるのがとてもイヤだった。女性は当時、母親にそれを伝えることはできたが、男性を怖いという気持ちが今でもあるという。 「その方は今は40代くらいです。私が『触られたあなたが悪いのではなく、触ったほうが悪いんです』と言ったら、『やっと気持ちのつかえが取れました』と言っていました」 では自分で「イヤ」と言えない乳幼児についてはどうだろう? 「女の子を出産して育休から戻ってきた幼稚園の教員が、『この子の性器を見ていいのだろうかと思う』と言ったことがありました。当然、お世話をするので見ることにはなりますが、そういう感覚は大事だと思います。おむつ替えにしても、まだ小さくてわからないから誰がどこでやってもいいというのは違うと思います。大事にされた子どもは自分も他者も大事にしようと思う。そういう子どもに育てたいなら、その子をいつでも一人の人間として尊重しなければならないと思います」