「息子は自分のからだの大切さを知っている」――幼稚園の性教育、子どもの学びと親の衝撃 #性のギモン
「ママ、生理でつらいんだったら寝てなよ」と息子
セクシュアリティ教育に触れて、2人が気になっているのは実は夫婦の関係だ。 「うちは私以外は男ばかりの家庭で、家事が私一人に集中している。でも息子たちの時代は家事の分担は必須、共働きも当たり前でしょう。親の背中を見て子どもは育つので、夫とのパートナーシップが気になります。でも54歳の夫は、今のところ反面教師。息子たちは、『ママ、生理でつらいんだったら寝てなよ』などと言ってくれて夫より優しいです」(福井さん) 荒井さんの夫は36歳。荒井さんもまた、家のことを一手に担っている状態だという。 2人はもっと性について学びたいと、今年6月に性と生と人権を考える同好会を立ち上げた。保護者からメンバーを募集し、2人を含めて13人になった。うち1人が男性だ。「お父さん側からもお話が聞けるのがとてもいいと思います。夫にも参加してほしいんですが、難しいかな」と荒井さん。福井さんは次の会合に夫を誘った。 「性について学ぶことは生き方につながるというのを、息子たちの成長を見るなかで実感しています。同性・異性・家族などすべての関係につながっていく。参加されたお父さんは、『私たちがどうやって幸せに生きていくかにつながりますよね』とおっしゃっていました」(福井さん)
息子がスカートをはきたいと言ったらどうする?
北山先生の元には、保護者からさまざまな性についての相談が寄せられる。その中には子どもの性自認についての相談もあるという。 「そういう時は、お子さんの様子をよく聞きます。例えば、ピアノの発表会にドレスを着たいという5歳の男の子。お母さんから相談がありました。幼稚園ではズボンをはいています。でも出かける時に『スカートをはきたい』『リボンをつけたい』と言うこともあるからそうさせている、ということでした。お母さんに、『それはいいですね』と言いました。子どもがやりたいことにご両親が応えてくれている。子どもにとってそれは、とても安心感があることですから」 しかし、男の子がスカートをはいたりリボンをつけたりして外を歩けば、ジロジロ見られることもあるという。 「息子にドレスを着させてあげたい。でも『ドレスばかりが注目されて、肝心の演奏を聴いてもらえないのではないか』とお母さんは心配し、そのことを本人に伝えました。そして選択肢として、オレンジ色のタキシード風の衣装も勧めたそうです。結局、最後まで迷ってその子はドレスではなくそちらを選びました」