「息子は自分のからだの大切さを知っている」――幼稚園の性教育、子どもの学びと親の衝撃 #性のギモン
子どもの学びを通して、親たちの受けた衝撃
和光学園で行っているのは、「包括的セクシュアリティ教育」(以下、セクシュアリティ教育)と呼ばれるものだ。2009年にユネスコが発表した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」に基づき、さまざまな国で行われている。科学的にからだの仕組みを教え、人間関係やジェンダーの理解、人権などについても広く学び、5歳から学習目標がある。 和光学園では幼稚園だけでなく、小・中・高校でもセクシュアリティ教育を引き続き行う。福井奈巳さん(50歳)は小3と高2の息子たちが和光に通っている。荒井美保さん(36歳)は高2の娘を筆頭に、中1の娘、小3の息子、幼稚園児の息子の4人の子が和光に通っている。2人とも子どもの学習を通じてセクシュアリティ教育に出合い、自分たちが教わることのなかった学習内容に衝撃を受けたという。 「幼稚園で男女別々に着替えることも、最初はこの年齢でそこまでしなくても、と思っていました」(福井さん)
学習によって、子どもたちにどのような変化があるのだろうか。 「小3の息子が小1くらいの時に、一緒にお風呂に入っていて。かわいいからと息子のお尻をふざけて洗っていたら、『やめてほしい』と言われてしまいました。『自分のおちんちんとお尻は自分で洗うから』と。ハッとしました。子どもって自分の付属品みたいに、なんでもしていい相手だと思っていたんです。彼がキッパリと拒否したことが素晴らしいと思いました。『ごめんね、大事な場所だよね』とすぐに謝りました」(福井さん) 福井さんは子どもの変化を見て、自分のことも考えた。 「息子は自分のからだの大切さを知っているんだと思いました。私もそういう教育を受けたかった。例えば、痴漢なんて本当はあり得ない行為です。でも、『ああ、痴漢に遭っちゃった』で終わらせていた。触れられることへのハードルが私の中で低くなっていた。だから性について学ぶことは大事だなと痛感しています」 荒井さんもこう言う。 「高2の娘は時々、恋愛や生理について私に聞いてきたりします。私はそういうことを親に一切、話してこなかったので、これも学びのおかげなのかもしれません。娘は、自分のからだを大切にしながら相手も大切にするような恋愛をしていくんだろうと思います。それに、友人も大切にできているんじゃないかと思います」