4階級制覇王者の井岡一翔は本当に「日本人ジャッジ3人」の恩恵を受けてV3に成功したのか?
32歳の井岡には、遠回りしている時間は残されていない。統一戦以外のビッグマッチを狙うのであれば、階級をバンタムに上げての5階級制覇プランしかない。そこには4団体統一を狙うWBA世界スーパー、IBF同級王者の“モンスター”井上尚弥(28、大橋)が君臨している。 井岡は、バンタム転級の可能性は否定した。 「これが無理なら5階級に行くということはない。スーパーフライは、パフォーマンス、コンディションを作るにはベストな階級。この階級で“井岡が一番強い”と世界へ認知を広げたら、そこ(5階級制覇)に視野がいくかもしれない。こういう試合が見たいという一階級上にいい選手がいて、そうなったらおもしろい。ただ、今は、ここ(スーパーフライ級)にこだわっていきたいと思う」 だが、言葉に含みは持たせた。 最強を求める井岡のボクシングロードにまだ終着点はない。 最後に大晦日の試合で、賛否の論争となりJBCから厳重注意処分を受けた井岡のタトゥー問題について触れておきたい。 今回もクリンチなどの接近戦が多い試合展開だったことも手伝って、2ラウンドが終わると、左腕と左胸のタトゥーが露出しはじめて「試合が終わったら全部取れてしまっていました」と井岡自身が振り返るほど、ハッキリとさらけだすことになった。 ただ、今回はJBCがスプレー式の塗布剤を井岡側に提供。井岡側もその塗布剤を使用してタトゥーを隠し、控室でJBCの職員が念入りに確認作業をした上でリングに送り出していた。井岡も「JBCがいつも以上に見守っている中で指示があって、これでリングに上がっていいとなった。JBCの言われたことをやった」という。 セミファイナルでKO勝ちした石脇麻生(寝屋川石田)が、同じスプレーを使って胸のタトゥーを隠してほとんど剥がれ落ちることがなかっただけにJBCの成富毅事務局長も、「いろいろ試してやっていただいたが、それでも不十分だった。ちょっと頭が痛い。課題ですね」と困惑していた。 そして「今後どのようにして隠していくかを検討しなければならない。練習のときからテストしてもらった方がいいのかもしれない」と今後の改善策を明かした。 この塗布剤は、最初に黒色を下地に塗り、次にベージュ色のスプレーを上からかぶせるものだが、その黒色の下地がうまく塗れていなかった可能性があるらしい。 井岡は、「大晦日の試合のことは誤解されているが、ルールを破ってリングに上がったとは思っていない。(タトゥーを隠すファンデーションの)濃い薄いのこと。決まっているルールを変えたいとか、ルールに何かを言う権利や考えはない」とした上で、個人的に問題提起はした。 「試合に向けて集中している時間に入念に塗ること(タトゥーを隠すこと)が必要なのか。相手は、(タトゥーを隠すファンデーションを)塗らずにリングに上がっている。重要視するところが違う。もっとプレーに集中できる環境を作った方がいい」 井岡は、ルールの是非ではなく、試合直前の控室での重要な時間帯にタトゥーを隠す措置をしなければならないことについて納得がいかないという。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)