阪神は4球団競合の”超スラッガー”佐藤輝明を育てることができるのか…元近鉄監督の佐々木恭介氏が疑問
この日の佐藤はバットだけではなく、足と守備でもポテンシャルの高さを印象づけた。初回は死球で出ると、次打者の中越え三塁打の間に一塁からスピードに乗って長駆ホームイン。サードの守備ではバントされた打球を素手でつかんでジャンピングスローを見せたかと思えば、挟殺プレーでタッチした後、至近距離での振り向きざまの素早いスナップスローをする器用さもチラリ。1メートル87、94キロの立派な体格ながら三塁線の当たりに横っ飛びする機敏さも披露した。 田中監督は改めて阪神に外野手ではなく、内野手での起用を訴えた。 「あれが佐藤のポテンシャル。華がある選手なので一塁でも三塁でも、とにかく内野で使ってもらいたい。プロの二遊間は難しいでしょうが、臨機応変に、本能的に体が反応するタイプなんです」 阪神の三塁には、本塁打、打点の2冠を争っている4番の大山悠輔がいて、一塁には、まだ去就が決まらないボーアとマルテがいるため、矢野燿大監督の構想は、外野での起用。佐藤の訴えをどう受け入れ、どう起用するのか。矢野監督の決断が問われるところだが、肝心のバッティングに関しても阪神の育成能力を疑問視する声があった。 元近鉄監督で、阪神、西武、中日で打撃コーチを務め、中日ではヘッド、監督代行まで歴任した佐々木氏だ。 この日、阪神のスカウト勢がチェックにきていたが、佐々木氏は、近鉄時代から旧知の畑山俊二・統括スカウトに向かって、「佐藤クンは一番嫌なところに入ったんとちゃうかな」と、ジョークとも本気ともとれるキツイ一言をぶつけた。 これには畑山チーフも絶句するしかなかったが、佐々木氏が、その発言のココロをこう説いた。 「(阪神ではなく)王さんのところに行くのが一番良かったんと違うかな。パ・リーグの方が大きく育ててくれるだろうから」 佐藤はソフトバンク、巨人、オリックス、阪神の4球団から指名されていた。 なぜ佐々木氏は、阪神の育成能力に疑念を抱くのか。実は、佐々木氏は、この日の4打席で佐藤のプロでの課題点をしっかりと見つけだしていた。 「プロに入って一番苦労するのはインコースと高め。そこに対応できる打ち方をしっかりと身につけないと出番がなくなってしまう。佐藤クンは、どちらかというとローボールヒッター。きょうも最初の打席で内角高めを攻められてデッドボールを受けた。これでインコースを意識させられ、2打席目は、外の低めスライダーで空振り三振という典型的なパターンでやられていた」 確かに第1打席の死球から第2打席の三振につながるのは、そのパターンだった。プロならば、いっそう厳しく攻め込まれるだろう。