史上最高値に迫る“もう一つ”の日経平均「配当込み」
4万1000円を超す高値に――。史上最高値に近づく“もう一つ”の日経平均株価があるといいます。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストの解説です。 【グラフ】日経平均が好調、バブル最高値も“射程” それって本当?
10年、50年といった長期では大きな差
日経平均は11月10日に1991年来となる2万5000円を回復する場面がありました。そして、もう一つの日経平均株価は4万1000円を回復しました。もう一つの日経平均というのは、普段私たちが報道などで目にする日経平均株価に配当金受け取り相当額を加えた日経平均配当込み(トータルリターン)の値です。その尺度でみた日経平均は11月6日に4万円を超えた後、11月10日には4万1107円を付け、1989(平成元)年12月につけた史上最高値である4万3200円へ10%以内に迫りました。 株式投資の損益を計算する際、「〇〇円で買って、〇〇で売却」と言った具合に配当を含まない株価水準で計算することが多々あります。ただし、投資家が直面する損益は、株価の変動に配当が加わりますから、それを考慮する必要があります。配当は1年以内の短期トレードではごくわずかな影響しか与えませんが、グラフをみれば明らかな通り、5年や10年、あるいは30年、50年といった超長期では大きな差を生みます。
「プラス3.3%」と「プラス4.6%」
ここで日経平均株価の長期データを整理します。まず、私たちがニュースや新聞でよく目にする配当を含まない日経平均株価は、1979年末からの幾何平均での収益率の伸びが1年あたりプラス3.3%となります(伸び率の平均算出にあたっては年ごとの伸び率を単純平均した算術平均ではなく、幾何平均を用いる)。これは1979年末の日経平均6569円と現在の株価約2万5000円を比較して算出した数値です。 それに対して日経平均配当込みで計算した収益率はプラス4.6%です。同じく1979年末の日経平均6569円と現在の約4万1000円から算出した数値です。つまり、配当の有無で年あたり1.2%程度の差が生まれたことになります(配当なしの収益率プラス3.3%、配当込みの収益率プラス4.6%の差)。この間の日経平均株価の標準偏差が22.3%であることを踏まえると、1年あたり1.2%の差は小さいように思えますが、40年も累積すると非常に大きな差となることがグラフから見て取れます。