「日銀化」するFRB でも違うのは……?
新型コロナウイルスがもたらした経済危機に各国の中央銀行が苦悩する中で、第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストは米連邦準備制度理事会(FRB)と日本銀行に類似点と相違点を見出します。藤代氏の考察です。 【グラフ】米消費者物価、日本のインフレ率停滞シナリオに一石?
ゼロ金利、量的緩和……次々導入
米国の中央銀行であるFRBが「日銀化」しています。FRBは、かつて日銀が採用したゼロ金利政策、量的緩和策、金融緩和の長期化を宣言する時間軸政策(現在はフォワードガイダンスと呼ぶのが一般的)を次々に導入しています。現在、日銀が実施しているイールドカーブ・コントロール政策(長期金利を特定の数値に固定)こそ導入していませんが、今春には導入が取り沙汰されましたし、今後の動向次第では再び議論が盛り上がることも十分に考えられます。 一方、日銀とFRBで異なるのは政府との関係です。どちらの中央銀行も政府から「独立」しているのは同じですが、日銀が政府の財政政策に注文をつけることは「御法度」のような空気があるのに対して、FRBはかなりオープンに主張を展開します。象徴的だったのは9月23日のパウエル議長、クラリダ副議長、ローゼングレン ボストン連銀総裁、エバンス シカゴ連銀総裁の発言です。
【パウエル議長】
「コロナ禍からの景気回復が進展しているとはいえ、コロナ前の2月時点と比較すると、なお何百万人もの失業者がおり、道のりは長い」「景気回復への取り組みを続ける必要がある。議会とFRBの双方が支援すれば、回復のスピードは速まる」「追加経済対策をめぐる政治的行き詰まりの中、追加財政支援が必要になる可能性が高い」。また22日の下院金融委員会では「先行きはコロナウイルスの抑制、政府のあらゆるレベルでの政策措置にかかってくる」と発言。24日の上院金融委員会では「(家計が)最終的に資金を使い果たし、支出削減を余儀なくされ、家を失う恐れがある」「これは追加措置を行わない場合のリスクだ。このようなケースはまだ見られないが、そう遠くない将来に現れるかもしれない」とした。