火山と紛争に翻弄される「風光明媚な街」 噴火から1か月、コンゴ民主共和国
アフリカ大陸の中央に位置するコンゴ民主共和国の東部にあるニーラゴンゴ山(標高3470メートル)が噴火してから1か月が経ちました。溶岩は同国北東部の拠点都市・ゴマの市街地に向かって流れ、市民の3分の2に当たる約40万人には避難指示が出されました。また、ゴマ市はルワンダと隣接しており交易の要所として栄えてきた反面、国境に近いがために隣国から避難民が押し寄せたり、武装勢力の被害に遭ったり、紛争の余波を受けることもしばしばあったといいます。どのような地域なのでしょうか。国際協力機構(JICA)の同国事務所、柴田和直所長に話を聞きました。
今回の噴火、被害は?
――今回の火山噴火の被害状況を教えてください。 5月22日の夜7時に噴火した溶岩は、二手に分かれて流れました。拠点都市であるゴマには国際空港がありますが、空港まで300メートルという地点で、幸いにして溶岩の流れが止まりました。 それでも、溶岩は17の村を巻き込み、約2万人の人口が暮らす地域を覆い、犠牲者も出ました。 溶岩は止まりましたが、噴火後数日間は強い地震が強く続き、さらなる噴火も危惧されたため、26日からはゴマ市の住民の3分の2にあたる40万人に避難命令が出されました。
――ニーラゴンゴ山が噴火するのは珍しいことですか。 いいえ、1977年と2002年にも大きな噴火をしています。ゴマ市周辺は地溝帯(断層の裂け目)となっており、アフリカで最も活発な火山地域です。ニーラゴンゴ山以外にも非常に活発な火山があります。 02年の噴火では、流れ出た溶岩がゴマの街を貫くように流れ、245人が亡くなったと報告されています。このときも40万人に避難命令が出ました。 ――その後も揺れや噴火活動は続いているのでしょうか。 大きな地震が起きたとは聞いていません。 噴火直後には、ゴマ市内に地割れが起きて溶岩が溢れ出たり、市に隣接するキヴ湖で湖内爆発が起きて湖の底から二酸化炭素が出て多くの周辺住民が窒息してしまったり、という恐ろしい想定も懸念されていましたが、そのような状況には至っていません。ただ、今回の噴火が本当に収まったのか、専門家でも予測は難しいそうです。 ――地域の経済・産業に与える影響はいかがでしょう。 経済的な活動という意味では、非常に大きな悪影響が出ています。人口の3分の2に避難命令が出ており、街の経済機能は麻痺しています。人がいないので商業活動はまともにできません。 避難民が避難した先でコレラにかかったり、食糧不足が続いたり、命に係わる状況も起きるでしょう。あるいは家が倒壊し、荒れた街で生活を再開すること、生活すること自体が非常に難しい中で、一旦停滞した経済活動を戻すことは簡単ではありません。 また、いうまでもなく、この噴火は新型コロナウイルスの流行という、そもそも経済に対して打撃を与える状況のなかで発生したものです。