火山と紛争に翻弄される「風光明媚な街」 噴火から1か月、コンゴ民主共和国
紛争、難民……地理的宿命か
――ゴマ市とはどのような街なのでしょうか。 コンゴ民主共和国は非常に面積が大きい国です。日本の6倍、西ヨーロッパと同等の大きさです。首都キンシャサは西部にあるのに対し、ゴマ市は標高が高い東部の高地にあります。 周辺にはキヴ湖や火山を含む山やゴリラのいる自然公園があり普段であれば観光もできる地域です。また、スマートフォンに使われるタンタルなどの鉱物やコーヒー、牛肉、チーズなどの農産物が取れる地域も近くにあり、それらの売買が行われる交易の街として大事な役目を果たしています。国際空港もあり、陸路・水路・空路のいずれも活用できます。 ――なぜ紛争が起きたのでしょうか。 地理的にルワンダ国境に接する街として利点がある反面、1994年のルワンダ内の大虐殺が起きた際には大量に難民が国境を渡ってゴマ市をはじめとするコンゴ民主共和国内になだれ込みました。 祖国を追われたフツ族が武装し、ルワンダを攻撃したり、逆にルワンダの援護を受けた反政府武装勢力が結成され、ザイール(当時)のモブツ大統領の30年以上にわたる独裁政権を打倒したりして、内戦状態にさらに周辺国が介入しアフリカ大戦とも呼ばれる戦争になったこともあり、現在までに600万人もの人が亡くなりました。
――武力を行使するのはルワンダの混乱に乗じた勢力だけですか。 必ずしもそうではなく、多くのグループがいます。例えば、ゴマの北のベニという地域で活動するADF(民主同盟軍)という勢力は、厳密なところは分かりませんが、IS(イスラム国)の一部を名乗っています。 コンゴ民主共和国内には鉱物があるため、ルワンダやウガンダがバックについているとも言われる武装勢力も含めその権益をめぐって争いを起こすこともしばしばあります。 ――現在、武装勢力による活動はどの程度活発なのでしょうか。 ゴマ市に限った話ではありませんが、コンゴ民主共和国の東部全般においては武装勢力の活動は続いています。昨年2020年だけでも、東部地域で約3000人が武装勢力に襲われ、殺されています。今年2月にはイタリアの駐コンゴ民主共和国大使が襲われ、亡くなりました。 一部の武装勢力は鉱山がある地域を実効支配して、ルワンダとウガンダなどを経て売り渡すことにより活動資金を得ていくのだと言われています。 ただ、鉱物があり武装勢力が活動する場所はゴマの市街地からは離れています。ゴマの街それ自体は大きな街であって、かつ産業も盛んです。国連PKO部隊も駐屯し、援助関係者も訪れる街であり、今回の火山噴火前までは通常に近い日常生活が送られていました。