「悪魔の前での失敗」にトイレで泣いた20代を超えて――TBS江藤愛アナを支えるもの
性格とは真逆の職業を選んだんです
時事については、「受験生のように」情報をインプットしようと毎日心がけている。 アナウンサーにとって、準備は命だと江藤は言う。 「地震やJアラートについては、伝える際の定型文のようなものもあるんですが、それ以外に大切なことがあると思っています。視聴者の方々に、共感するということですね。不安や恐れ、そうした気持ちを共有しながらも、伝える側の私たちが不安な顔をしてはいけないので、例えばミサイルであれば、関連情報を日々まとめておくなど、毎日が準備の連続です」
入社して13年。今ではTBSのエース的存在の江藤だが、子ども時代は内気だったという。しゃべるのは大の苦手。活発な姉の影に隠れたおとなしい少女は、中学生の頃から、テレビの中で堂々と話すアナウンサーの姿に憧れるようになった。 「地元の人たちからしたら、意外でしょうね。明るい姉の方が、いかにもアナウンサー向きに見えたと思います。2歳違いの姉は生徒会や応援団で活躍するようなタイプ。高校までずっと一緒でしたから、なんでもできる姉がずっとコンプレックスでした。そんな自分が嫌で、性格とは真逆の職業を選んだんです」 入社しても、「自分は下手」という意識が拭えなかった。緊張して、声が震えてしまう。コンプレックスはずっとつきまとい、スタッフや後輩から慕われる先輩アナウンサーが、とにかくかっこよく見えたという。いつか自分も、「この人がいたら安心する」という存在になりたい。そんな思いで、ひたむきに仕事に取り組んできた。
「番組のシフトチェンジがあった時に、後輩が『江藤さんが毎日いないのは、悲しいです』ってメールをくれたんです。自分が理想としていた姿に、少し近づけたのかもしれない、少なくとも、私の存在が、誰かの役に立っている、そういう仕事ができているのかなって、初めてその時に思いました。それが、去年のことです」 20代のころには、忘れられない大失敗もある。