能登地震「携帯つながらない」 被災地の通信途絶 新技術で解消なるか #災害に備える
もしこのシステムが導入されれば、孤立集落でも人との交流やドローンを通じて、住民一人ひとりの被災状況などを人手を介さずシステムで確認することが期待できる。 このシステム開発のきっかけは、2011年3月11日の東日本大震災だったと董さんは語る。 「当時、私はカナダに留学中で、テレビで大津波の発生を知り、慌てて南三陸町(宮城県)に住む両親に電話したのですが、つながりませんでした」 両親の安否に関する情報を求める中、震災から5日後、思わぬことから両親の無事を知った。 「両親が勤めていたホテルに宿泊していたカメラマンが被災地の写真を何枚も撮ってTwitter(現X)に投稿したんです。そのツイートのおかげで両親の無事が確認できました」 この経験から「人」の通信システムを思いついたという。 「このカメラマンは通信不能の南三陸町から歩いて、途中ヒッチハイクもしながらなんと92キロ先の仙台まで移動して、写真データをTwitterにアップしていました。おかげで、人が動くことで情報の重要な担い手になることに気づかされたんです」
「孤立化」防ぐための情報共有へ通信インフラの重要性
安否不明者の把握など正確な情報の収集やデータの整理は、物資の支援と同様に必要な仕組みだが、そのシステムの構築や維持は緊急時にはなかなか目を向ける余裕がない。 「孤立した避難所には物資も医療も届かないので、それらを早く見つけて、データベースに登録し、支援につなげる必要があります」 そう語る宮川祥子さんは、一般社団法人情報支援レスキュー隊(IT DART)の代表理事だ。1月7日以来、地元の神奈川と金沢市を何度も行き来し、情報やデータ整理の支援に取り組んできた。
今回の地震では指定避難所の多くが損壊し、指定外の避難所が多く立ち上がった。宮川さんらは石川県庁内のNPOの拠点で、また全国のメンバーがリモートで参加して新たな避難所の場所や規模などのデータ整理に協力した。 「避難所の水は出ているのか、食料、暖房、トイレは足りているのか、災害時要配慮者は何人かなど、先遣隊として被災地入りした自衛隊、DMAT(災害派遣医療チーム)、民間支援団体などから得られた情報を整理しました」