能登地震「携帯つながらない」 被災地の通信途絶 新技術で解消なるか #災害に備える
同町は南海トラフ地震の被害想定エリアに含まれる。四方を山と海に囲まれた沿岸部に複数の集落が点在しており、もし巨大地震と津波が襲来すれば、能登半島と同様に、多数の孤立集落が発生する可能性がある。 「町役場、病院、消防署など要所要所に基地局を設置しています。太陽光パネルと蓄電池を備えているので停電しても最低3日間は稼働しますし、天気がよければそれ以上使えます」
Bluetooth介したCOCOA方式システムで「助けて」メッセージ伝達も
今回の能登半島地震では、行政からの安否不明者の発表数が急増した日がある。 1月4日時点で石川県内の安否不明者は79人(死者81人)だった。だがその後、8日には323人(死者は168人)まで急増した。4月2日時点での安否不明者は2人(死者245人)。当時、通信や道路が途絶した影響か、情報が大きく混乱していたことは否めない。 こうした情報収集や共有のあり方について、通常の電話やデータ入力などとは異なる手法を思いついた研究者がいる。 室蘭工業大学大学院工学研究科教授の董冕雄(とう・めんゆう)さんが提案するシステムは、3つの異なる通信範囲を持つ技術から構成される。名づけて「天・地・人」。このうちの「人」が、安否不明者など人の生存確認に関する仕組みだ。
簡潔に言えば、スマホのBluetooth通信を介し、バケツリレーのように自動的に端末を中継しながら近くにいた人物の情報を運ぶ通信技術。董さんは、新型コロナの接触確認アプリ「COCOA」を覚えていますか?と問いかける。 「あれはBluetooth通信を利用して、1メートル程度の距離以内に15分以上いたアプリ利用者のデータを記録し、陽性者との接触の可能性を通知してくれる仕組みでした。私たちが考案したこの『人』システムで実行するのは、COCOAのように、近くにいる人とデータをやり取りする仕組みです。その場合、連絡先を知らない人でも近くにいるだけでデータ通信ができる。『身動きができないので助けてほしい』といったテキストメッセージを、近くを通った人に伝えることもできます」 「地」システムの通信技術では、このようにして人が運ぶ情報を、ドローンやロボットなどを使って1キロほど離れた遠隔地へ伝える。董さんらはドローンに搭載できる小型コンピュータだけで顔認識や物体検知などの高度な処理ができるシステムも開発している。さらに「天」システムで、10キロ先の低消費電力広域通信網(LPWAN)の基地局、あるいは通信衛星などのインターネットへつなげる。こうして「天」「地」「人」とデータの通信手段を変えることで、生存確認など緊急時の情報共有を目指している。