全日本新人王戦で採点発表が集計ミスで覆る異例のドタバタ…勝者はジム閉鎖の逆境を乗り越えた珍名ボクサー「宝珠山」
プロボクシングの全日本新人王決定戦が21日、東京の後楽園ホールで無観客で行われ全10階級で東軍、西軍それぞれの代表が激突した。フライ級では宝珠山晃(24、三迫)と神崎靖浩(20、倉敷守安)が対戦。宝珠山が新人王となったが、一度「ドロー」と発表された結果が、集計ミスで覆るという前代未聞のドタバタ劇があった。また大会MVPには、1ラウンド2分5秒でTKO勝利したスーパーフェザー級の奈良井翼(21、RK蒲田)が選ばれた。
「ドロー」発表が一転「勝敗がついています」
「この試合はドロー。引き分けでございます」 それが最初の場内アナウンスだった。 新型コロナ対策でリングには上がらず本部席でマイクを持ったアナウンサーが続けて、公式記録は引き分け扱いだが、優勢点で勝者を決定する全日本新人王の特別ルールを説明。 「それでは採点の結果、並びに優勢点を発表します」と続けた直後に“空白の時間”があった。両コーナーで選手も陣営も息を呑む。だが、次の瞬間、まさかのアナウンスが聞こえてきた。 「大変失礼しました。ジャッジペーパーの読み間違いがございました。この試合勝敗に決着がついております。減点がございましたので、減点の結果、採点を訂正します」 本部席に集まった3枚のジャッジペーパーの集計ミスである。 無観客だったが、関係者の中からは「えー?」という声が漏れ、メディアも含めて場内がザワつく。改めて発表された採点結果は、47-46で1人が神崎、他の2人が47-46で宝珠山を支持した。 2回に神崎が左フックで宝珠山からダウンを奪ったが、ダウン後にパンチを放つ反則行為があり、減点「1」が科せられていたが、それが採点に反映されていなかったのである。 勝者の宝珠山はホッとした表情。そしてレフェリーに右手を上げられ苦笑いを浮かべた。 「ドロー判定を聞く前から負けたと思っていました。パンチも効かされてパニックになっていましたからね。ポイントで負けていると思っていましたしダウンも奪われているし優勢点でも負けだと」 それが急転、思いもしない展開に。 「サプライズです。まだ実感はわきません。胸を張って新人王になったと言える試合ではなく、素直に喜べなかったんですが、結果がすべて。いい経験をさせてもらいました」 前代未聞の運営サイドの集計ミスという失態にふりまわされたが、「そのことについては何とも思いません。むしろコロナ禍で開催していただいたことに感謝です」と言う。 一方、納得のいかない神崎の倉敷守安陣営は、故意に殴ったわけではないダウン後のパンチに減点を取られたことに対し抗議をしたが受け入れられなかった。