ハウスメーカーが自社運営する沖縄県離島の「シーウッドホテル」、体験で記憶に残る旅を、その魅力と戦略を取材した
ハウスメーカーがホテル事業を自社運営するワケ
シーウッドホテルは2020年2月に開業した。飯田産業ホテル事業部部長も務める谷支配人は、ホテル事業について「ハウスメーカーとして将来を見据えたうえでの事業の多角化」と説明。「100歳まで住める住宅を提供するハウスメーカーを目指すなかで、お客様のライフスタイルにもどれだけ関わっていけるかが私たちの使命になります」と話す。 特徴的なのは、運営をプロの事業者に委託するのではなく、自社でおこなっているところだ。谷支配人は「運営自体は色々な考え方がありますが、お客様のニーズに合った滞在を提案するためには、自分たちできちっとしたものをつくった方がいいと考えています」と、その理由を説明した。 また、「観光で来間島や宮古島を訪れたとき、移住先として検討できる可能性も高いのではないか」と谷支配人。シーウッドホテルのビラは、一軒家に住むような滞在ができることから、移住体験住宅としての役割にもなりうるとの考えも示した。 開業して約4年半。ファミリー層やカップルを中心に集客を伸ばしてきた。最近ではリピーターも増え、なかには「セカンドハウスとしてシーウッドホテルを利用する方もいます」と明かす。現在は、「多くの方々に使っていただきたい」(谷氏)ことから、OTAでの販売が中心だが、今後はさらに直販にも力を入れていきたいという。 さらに、シーウッドホテルでは地域との関係も重視している。「来間島の人たちは、観光による地域活性化を目指す方向性を持っています。シーウッドホテルは、宿泊担当としてその期待に応えたいと考えています」と話す。 地域との関わりでは、今年3月からは「”KURIMA”花プロジェクト」を始めた。シーウッドホテルは来間部落会に140万本分のヒマワリの種を贈呈。島中をヒマワリでいっぱいにすることで、新たな観光コンテンツにしようという取り組みを進めている。 また、ヒマワリは農地の良化にも役立ち、将来的にはヒマワリの種から油を採取し、新たな地域産物として収益化も視野に入れているという。加えて、このプロジェクトの目的には、島民の美化意識の向上もある。「観光名所にするためには、島自体が綺麗でなければいけない。ゴミのポイ捨てなどで島民自身の意識改革が進めば」と期待をかける。 宮古島、来間島、下地島を含めた宮古列島には独自の観光コンテンツが豊富にある。「そのコンテンツが評価され、お金が落ちる仕組みができれば、地域も元気になると思います」と谷支配人。シーウッドホテルは、その一翼を担う。