年収1400万円大手商社マンが専業主婦の妻と離婚…「生活レベル」を落としたくない妻の「要求」
筆者は「家族のためのADRセンター」という民間の調停センターを運営している。取り扱う分野は親族間のトラブル全般であるが、圧倒的に多いのが夫婦の離婚問題である。ADRは、「夫婦だけでは話し合いができない。でも、弁護士に依頼して裁判所で争いたいわけではない」いう夫婦の利用が多いため、裁判所を利用する夫婦に比べると紛争性が低い。また、同席で話し合うことも多く、その夫婦の「らしさ」というか、人間味のあるやり取りになることも多い。そこで「ADR離婚の現場から」シリーズと名付け、離婚協議のリアルをお伝えする。 【写真】年収1400万円大手商社マンが専業主婦の妻と離婚…妻の「驚きの要求」 今回のコラムでは、「妻が専業主婦の夫婦の離婚」をテーマとする。共働き夫婦が増えたとはいえ、総務省の「労働力調査」(2023年)によると、専業主婦世帯の割合は3割弱であり、まだまだ専業主婦の妻も数多くいる。妻が専業主婦の夫婦の離婚は、ときに困難な場合がある。以下では、その困難さを体現した事例(「あるある」を詰め込んだ架空の事例)を紹介する。 商社に一般職として入社したマミは、同じプロジェクトに参加したことがきっかけで総合職の太一と結婚。専業主婦となる。長男・長女に恵まれ、何不自由ない幸せな家庭を築けたかと思われたが、子どもの教育方針をめぐってすれ違いが起きる。マミは子ども2人を私立小に通わせ、たくさんの習い事をさせた。太一は妻の関心が子どもに集中していること、また教育費を湯水のようにかけていることに不満があったが、家事・育児を全面的に妻に任せていたため、真剣な話し合いの機会を持たなかった。家に居場所が徐々になくなっていった太一は別居を選択する。迎えた第1回目のADRでは太一は家計管理に対する不満を、マミは夫に常日頃、夫に見下されているように感じていたことに対する不満をぶつけた。そして、第2回目のADRに突入する。 監修:九州大学法科大学院教授・入江秀晃 夫婦の詳しい経過は前編記事【子ども2人を私立小に通わせ、家計が破綻…専業主婦の妻と離婚を決意した大手商社勤め夫の末路】から。 〈ADRの経過・2〉