STAP細胞問題 アメリカでの改革に学ぶことはできるか?
4月9日午後、大阪市内のホテルで、理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーはSTAP細胞をめぐる問題について記者会見しました。論文の内容に疑惑を持たれていることについて謝罪すると同時に、STAP細胞の作製は200回以上成功しており、論文を撤回する考えがないことをあらためて示したのです。 【アーカイブ動画】STAP細胞問題で小保方晴子氏が会見
「研究不正」と「再現性」の2つの疑惑
筆者はその様子を、インターネット中継を通じて見ました。この事件が提起した問題はあまりに広く、『ネイチャー』論文の件だけに絞っても、疑問のすべてに小保方氏が説明できたとはいえません。先日来の理研側の会見も同様です。 そのことを前提としつつ、当面の疑問をやや強引にまとめるとこうなるでしょう。 (1) 今年1月末に科学誌『ネイチャー』で発表された論文2本に、どれだけの「研究不正(捏造・改竄・盗用)」があったのか?(=「研究不正」の問題) (2) その論文に書かれていた方法で、第三者が「STAP細胞」なる多能性細胞(いわゆる万能細胞)を再現することができるか?(=「再現性」の問題) この2つの疑問は、基本的には別の問題なので、別々に追及されるべきです。論文に研究不正がなくても、再現することができなければ、その価値はありません。再現することができたとしても、そのことで研究不正が許されるわけではありません。 しかしながら、再現できなければ、論文に何らかの欠陥があることになり、その欠陥が研究不正に起因するものである可能性が生じます。再現できれば、その論文には欠陥が少なく、それが研究不正に起因する可能性もきわめて低くなるはずです。 そして今日まで、小保方氏らが開発した方法で第三者がSTAP細胞をつくることができた、つまり再現できたという報告はありません。
「200回以上成功」「第三者に追試は?」
今回の会見では、小保方氏はSTAP細胞の作製に200回以上成功したことを明らかにしました。興味深いことは、サイエンスライターの片瀬久美子氏とのやりとりです。片瀬氏が「第三者に追試をお願いしたことはありますか?」と問うと、小保方氏は「若山研で若山先生や学生がやってくれました。ハーバードでもあります」と答えました。片瀬氏がさらに「小保方さんの方法をインディペンデントに(別個に)やってもらったことはありますか? あるとしたら誰に?」と問いかけると、「あります。成功していますが、個人の名前はちょっと…」と言葉を濁しました。「積極的に証言してもらったほうがいいのでは?」と片瀬氏が続けると、小保方氏は「なるほど…」と何か納得したような表情を見せました。しかしそこで弁護士が割って入って、次の質疑が始まってしまいました。