更年期症状による離職者は女性46万人、男性11万人にも。「更年期ロス」を防ぐ方法を高尾美穂医師が解説
「更年期ロス」という言葉が聞かれるようになりました。これは、更年期の症状が原因で、仕事にマイナスの影響が表れることを指します。更年期症状のために仕事を辞めざるをえなかった、人事評価が下がった、昇進を辞退した……などです。 医学博士・産婦人科専門医の高尾美穂医師は、『悩み・不安・困った! を専門医がスッキリ解決 更年期 そしてなりたい自分に近づく方法』(新星出版社刊)で、次のように述べています。 2021年に行われた大規模アンケート(「NHK」「女性の健康とメノポーズ協会」「POSSE」「労働政策研究・研修機構」「#みんなの生理」の共同企画により実施)では、治療が必要なレベルの更年期症状がある女性のうち、9.4%が「仕事を辞めた」と回答しました。この結果をもとに、40~50代女性全体で、更年期症状が原因で離職した人を推計すると、46万人に上るということです。 いま日本社会では、女性の管理職を増やすことが求められていますが、働き盛りである40~50代が更年期に当たることが、その実現を遠ざける一因になっていると考えられます。 このアンケートは男性にも行われており(男性の更年期の医学的定義はないが、ホルモンの減少が関係して不調が起こることがあると考えられている)、男性も、更年期症状が原因で離職した人は11万人に上ると推計されています。 更年期症状による離職の経済損失は、男女合わせて年間約6300億円になるそうです。「更年期ロス」は社会全体で解決すべき課題となっているのです。 これまで、更年期を社会でサポートしようという意識は低いものでしたが、今後、休暇などの制度を整え、治療などによって改善する人をふやしていけば、「更年期ロス」は防ぐことが可能なはずです。
症状があっても8割の女性が受診せず
厚生労働省が2022年に行った意識調査によると、「更年期症状が一つでもある」と回答した40代・50代の女性のうち、およそ8割の人が医療機関を受診していませんでした。 受診していない理由については、「医療機関に行くほどのことではないと思うから」が最も多く、次いで、「我慢できるから」が多い回答でした。 一方で、40代・50代で更年期症状が一つでもある人で、家事・外出・育児・介護・仕事を含む社会活動等において、影響が「かなりある」「とてもある」「少しある」と回答した人は合わせて約3割いました。つまり、症状があって、生活に影響があっても医療機関を受診していない人も少なくないということです。ちょっと心配な結果です。 医療機関に行くほどではないと思っている人・我慢できるからという人は、実際に症状がどの程度なのか、「簡略更年期指数チェックリスト」でチェックしていただくと一つの目安になります。当てはまる程度を選び、点数を合計してみましょう。ただ、更年期世代は、更年期症状と似た症状が出る病気になりやすい年齢でもあるので、気になる症状があれば医療機関を受診したほうが安心です。