絶滅危機の食文化つむぐ 「発酵オカン」出版へCF 滋賀・長浜のまちおこしグループ
滋賀県北東部の雪深い環境で育まれてきた発酵食文化を次世代に伝えようと、同県長浜市木之本町のまちおこしグループ「ツボのソコ」が「発酵オカン」出版プロジェクトを始めた。かつて木之本のどの家でも見られた漬物や味噌(みそ)づくりを受け継ぐ地元の女性グループ「発酵オカン」の暮らしや発酵食の歳時記などを、木之本と京都の2拠点で生活するルポライター&イラストレーター、松浦すみれさんのイラストで風情たっぷりに盛り込み、全国で出版するクラウドファンディング(CF)企画だ。 ■秘蔵レシピ 町の若い人がどんどん都会へ出ていき、畑で野菜を作っていたおじさん、おばさんも年をとって、畑で野菜を作る人が少なくなってしまった。でも、スーパーに行けば食材はなんでも手に入る-。 かつて冬は雪で閉じ込められる木之本の家々には、発酵食を漬けた壺が並んでいたが、そうしたバラエティーに富んだ発酵食は、地方をとりまく変化とともに次々と「絶滅危惧種」になっている。 こうした中、地元の主婦11人が平成28年、CFで募った資金を元手に郷土料理のランチを提供する「ブックカフェ すくらむ」(月2日、土日に営業)を開業。地域の女性らが集まって発酵食を作る拠点にもなり、令和4年には季節の発酵食を年4回届ける通信販売「オカンの発酵便」を始めた。 春はふきのとう味噌や粒山椒(さんしょう)味噌、夏はらっきょう漬けや茗荷(みょうが)漬け、秋は梅酢の紅しょうがや柚子(ゆず)味噌、冬は鮒(ふな)ずしや赤かぶらのぬか漬け-。松浦さんが木之本の家庭に代々伝わる秘蔵レシピなどを描いた「発酵通信」を添えて届けられ、40件限定の今年の申し込み分は既に完売している。 この活動が注目され「発酵のまちのオカン」としてテレビ番組に取り上げられるようになり、書店や出版事業などを展開する有隣堂(本社・横浜市)の編集者の目に留まったことが、今回の出版プロジェクトのきっかけ。昨年5月に「発酵オカンたちの四季折々の味とレシピ、ハツラツとした日常を全国に紹介したい」と編集者からツボのソコに提案があり、来年秋の出版を目指すことになった。 ■味をつむぐ