名勝負必至の4階級制覇王者・井岡一翔vs3階級制覇王者・田中恒成の日本人対決…勝つのはどっちだ?
計量後は、新型コロナ感染予防措置としてホテルに隔離されるため、リカバリー食は妻の手作りの”お弁当”を部屋の前に置いてもらうことになっている。炭水化物がメイン。井岡は栄養学の見地からグルテンフリーを心掛けているため、ご飯を中心にしてメニューだという。戻すのは、いつもと同じ4.5キロ。「体重を増やしても関係ない。動きやすいかどうか」に重点を置く。 家族の支えがあって、この場にたどりつき、そして家族のために負けられないリングなのである。 “参謀”のイスマエル・サラス・トレーナーの姿も計量会場に見えた。隔離期間を経て来日が間に合ったのも心強い。 一方の田中も臆するものは何もない。 井岡は憧れの人だった。高校生の頃、当時、世界王者だった井岡とスパーリングをし鼻血を噴出し前歯を折られた。後楽園ホールまで井岡の世界戦を見にきたこともある。だが、今、そのリスペクトは、ライバルを倒すためのモチベーションに変わった。 「この試合に勝って4階級制覇をして世代交代。ビッグチャンスであり、転機になる試合。オレが時代の先頭にたって新しいボクシング界にしていく。日本のレベルは高いので超実力派の新時代ですね。その覚悟はできています」 朝日新聞の記者に「井岡の”格の違い、レベルの違いを見せつける”といった発言をどう思うか」と聞かれ、しばし考えてから、「うーん。そんなに気にしてはいない。オレ。自信持ってリングに上がって勝つ気満々なんで。明日、自分の力を見せたいですね」と返答した。 田中のアドバンテージは減量苦からの解放である。 「一番いい減量調整ができた。全然、違う。最後の最後まで体重を落とすために汗を出すような練習より、この試合に向けてのトレーニングを続けてできた。力がみなぎっています。調子は抜群にいい」 階級を上げてくる田中と、この階級で4試合を経験している井岡のいわゆる「体格のフレームの違い」「フィジカルの差」が勝敗を分けるポイントと見る声は少なくない。だが、田中の二の腕は、驚くほど太くなり、その筋肉は盛り上がっていた。 WBA世界バンタム級スーパー、IBF世界同級王者の井上尚弥(大橋)は階級を上げるごとに減量苦から解放され、潜在能力を発揮できるようになり“モンスター”の領域まで強くなった。田中にも、それに似た効果が生まれているようにも見える。