場外ファイト火花の大晦日決戦…なぜ世界最速4階級制覇を狙う田中恒成は井岡一翔の過激挑発に大反撃をしたのか?
大晦日に大田区総合体育館で、井岡一翔(31、Ambition)が持つWBO世界スーパーフライ級王座に挑戦、世界最速記録の4階級制覇を狙う前WBO世界フライ級王者の田中恒成(25、畑中)が10日、オンライン会見を行い「KOで世代交代を果たす」と宣言をした。前日の会見では、井岡が超過激発言で挑発したが、15戦無敗の田中も負けじと反撃したもの。決戦を1か月以上も前にして注目の日本人対決にふさわしく場外戦に火花が散っている。
「スピード、パワー、スタミナ…負けているものはない」
挑戦者の若き3階級制覇王者も負けてはいなかった。 井岡の印象を聞かれ、「ここ10年、日本のボクシング界を引っ張ってきた選手」とリスペクトをした上で、こう豪語した。 「スピード、パワー、スタミナ。負けているものはどれもない。そのあたりを使って勝負したい。世代交代というか、文句のつけようのないKOで決着をつけたい。この試合に勝って日本のボクシング界を引っ張っていくという気持ちがある。そういう試合はKOで勝ちたい」 前日のリモート会見で井岡は、田中について「印象はない。注目もしていなかったし、今も注目していない」と語り、「レベルと格の違いを見せつける。負ける気がしない」と超過激発言を行ったが、それを受けての大反撃である。 それらの井岡の過激なコメントにも目を通したという田中は、「格の違い」についても、理路整然と、こう反撃した。 「井岡選手がチャンピオンですし、4階級制覇もしている。格という面では上かもしれない。でも、これに勝ってチャンピオンになると(自分が)4階級制覇を達成するので、達成すれば同じ。直接戦ったら俺が強い」 もう決戦は始まっている。“場外戦”でも負けていない。田中のコメントも超強気だ。
7年前、田中が高校3年時に、すでに世界王者だった井岡と4ラウンドのスパーリングをしたことがある。その際は、途中鼻血を出すほどの完敗だった。井岡は、「覚えていない」と語ったが、田中は、「そのときとは何もかも違うと思う」という。 何が違うのか?と聞かれて「実力」と一言。アマチュア時代の対戦結果が、プロの舞台でひっくり返るのは、“ボクシングあるある“ではある。 田中の反撃発言には根拠がある。 新型コロナの感染拡大の影響で海外との行き来ができなくなるギリギリのタイミングの3月上旬にフィリピンで合宿を行い、そこでさらなる進化への課題をつかんできた。ちょうど、フライ級のベルトの返上を決め、4階級制覇に照準を絞った頃だ。 「技術面と3分間の集中力ですかね。意識してやってきました」 だから試合の決まらない自粛期間中にもモチベーションが落ちることはなかった。 「試合がないと言っても、やることはボクシングしかなかった。そこでモチベーション落ちていても仕方がないのでフルに練習していた」 そして、こう言う。 「スーパーフライに上げてもスタイルは何も変わらない。ただ、この試合のない1年の間で、技術面がかなりレベルアップした。(大晦日の)試合を見たみんなを驚かせることができるかなと思う」 自信が裏付けとしてあるのだ。 ただ田中に不安点はある。 いわゆる階級の壁だ。フライ級に上げて3階級制覇に成功した2018年9月の木村翔戦では、これまでのスタイルを一変させてインファイトでも殴りあったが、フィジカルの差を露呈させ、それがジャッジの一人がドローをつけるという結果に反映された。そこから3度の防衛後、さらに1階級を上げるのだから、すでにスーパーフライ級で4試合を消化して、この階級のフィジカルを身につけつつある井岡とのフレームやパワーの違いが出る危険性がある。身長は井岡が166センチで、田中が164センチと、ほぼ変わらないが、リーチでは井岡が168センチ、田中が162センチと、わずかながら違いはある。 だが、田中は転級の不安点も一笑に付す。 「パンチの威力はあがる。適正階級なので楽しみのほうが大きい」 通常体重が60キロある田中は、フライ級でも10キロ弱の減量があり、決して楽に体重を落とせてきたわけではなかった。52.16キロがリミットのスーパーフライ級に上げることでむしろ減量苦から解放されてコンディションが作りやすくなると主張するのだ。 「なぜ適正?なんかそんな感じがしている。そろそろ体重変動をなくしたいし、減量も含めて、この階級が一番力を出せる」