エムポックスの隔離終了を合理的に決めるモデルを開発 名古屋大など
基本的な感染経路は、感染した人や動物の皮膚の病変・体液・血液との接触。性交渉をはじめとした粘膜を介した接触での感染頻度が高い。直接の接触がなくても、新型コロナウイルス感染症時に「濃厚接触者」とされたような、感染者と接近して長時間飛沫にさらされた人では飛沫感染する可能性も一部では報告されている。感染者の病室の空気からウイルスが検出された報告はあるが、実際に空気感染を起こした事例の確認はまだない。
個人差のあるウイルス排出期間
感染症対策として、米疾病予防管理センター(CDC)では、感染者に対して皮膚病変の改善まで約3週間の隔離を推奨している。名古屋大学の岩見教授らは「隔離終了が早すぎたり、不必要に長引いたりしているか検証できないか」と考え、疫学の知見をもつRIVMの三浦主任研究員らとシミュレーションモデルを組むことにした。
シミュレーションには、論文などでウイルス排出期間や排出量についてある程度分かっている欧州の90人のデータを用いた。感染者がPCR検査で陰性となり、ウイルスを排出していないと判断されるまでの期間は23~50日程度の範囲と推定された。ただ、主成分分析を行うと、90人は平均のウイルス排出期間が30.1日の「低い伝播リスクの感染者」(71人)、同42.7日の「高い伝播リスクの感染者」(19人)の2群に分かれ、個人ごとにウイルスの排出期間が大きく異なることが示された。
3つのルールで伝播防止を検証
隔離終了のルールによって、どれだけ伝播防止に効果をあげているか、一方で、他の人にウイルス感染を起こす心配の無い人を不要に隔離してしまう期間がどれだけあるかを検証した。ルールは(1)発疹などの症状が消失後に隔離を終了、(2)一定期間(約3週間)後に隔離を終了、(3)定められた回数の陰性検査結果で隔離を終了――の3つ。 ウイルスが病変中などに1ミリリットル中100万コピー以上の濃度である感染者は他の人にうつす「感染性閾値」を超えるとし、隔離の早期終了リスクを5%未満に抑えるとした条件などでシミュレーションすると、不必要な隔離期間が(1)は15.1日、(2)は9.4日、(3)は5日間隔で3回連続PCR検査陰性なら7.4日と減った。