神戸がイニエスタ高額年俸でもJ歴代最高営業収益となった理由と、それでも勝てないジレンマ
2018年度のJリーグ経営情報が24日に開示され、3月決算のジュビロ磐田など4クラブを除く、J1からJ3までの計50クラブの決算が明らかになった。 ずらりと並んだ数字のなかで目を引くのが、スペイン代表とFCバルセロナで一時代を築いたレジェンド、MFアンドレス・イニエスタが昨夏からプレーするヴィッセル神戸となる。収入にあたる「営業収益」は前年度比84.6%増の96億6600万円にのぼり、2017年度の浦和レッズの79億7100万円を大幅に更新する、Jリーグ歴代最高額を計上した。 ヴィッセルの2018年度決算は、さまざまな意味で注目を集めていた。2017年度は企業活動の最終的な成果を示す「当期純利益」で1億5500万円の赤字を計上し、経営の体力を示すバロメーターとなる「純資産」も、J1では最少となる800万円に目減りしていた。 4期ぶりに赤字へ転落した経営状態のところに推定年俸32億5000万円のイニエスタが加入した。支出にあたる「営業費用」の大部分を占める、 年俸などの総額となる「チーム人件費」が経営をさらに圧迫し、2018年度決算で800万円を超える赤字を計上すれば「純資産」がマイナスに、いわゆる債務超過に陥ることになる。 各クラブがJリーグで戦うには、Jリーグから毎年発行されるクラブライセンスが必要となる。発行条件は多岐にわたるが、なかでも重要視されているのが経営状態であり、規約では年度末決算で債務超過となったクラブはライセンスを剥奪される。 つまり、ヴィッセルは2018年度決算で債務超過となり、J1からの退会を余儀なくされるのでは、と懸念されていた。しかし、実際にフタを開けてみれば「当期純利益」は10億5200万円の黒字を計上。同時に「純資産」も10億6000万円にまで回復させた。 詳しい内訳を見れば、たとえば「営業費用」も2017年度の52億3700万円から、2018年度は76億4100万円へ増えている。イニエスタが加わったことで「チーム人件費」が31億400万円から、J1では群を抜く数字となる44億7700万円へ激増したことが支出を大きく膨らませた。 東京・文京区のJFAハウス内で開催されたメディア説明会に出席した、Jリーグクラブ経営本部の青影宜典本部長は、ヴィッセルの「チーム人件費」が前年度比で44.2%も増えた理由をこう推察した。 「個別のクラブの細かい情報を提供できない前提はありますけど、当然ながらイニエスタ選手の影響があり、この数字になっていると考えています」 増加額がイニエスタの推定年俸分よりも小さくなっているのは、昨年度はプレーしたのが半年間で、年俸として支払われた金額も半分となったためだと見られている。それでもヴィッセルの「営業費用」は、レッズの75億4000万円を上回る最高額となっている。 支出が増えながらも「当期純利益」が黒字に転じたのは、収入の合計額となる「営業収益」を構成している項目が大きく伸びたからに他ならない。具体的には「スポンサー収入」が28億5600万円増の62億800万円、「入場料収入」が3億2600万円増の8億4000万円、「物販収入」が1億9300万円増の3億8800万円、「その他収入」が11億2700万円増の16億1400万円となっている。 昨シーズンの後半を振り返れば、イニエスタ効果でホーム戦のチケットが軒並み完売となり、レプリカのユニフォームなども爆発的に売れた。「その他収入」にはリオ五輪代表のDF岩波拓也(レッズ)、韓国代表としてワールドカップ・ロシア大会に出場したMFチョン・ウヨン(アル・サッド)の移籍に伴って支払われた移籍金が含まれる。 また、ヴィッセルを運営する楽天ヴィッセル神戸株式会社(代表取締役社長・立花陽三)は、昨年度からホームのノエビアスタジアム神戸の管理運営事業者となった。スタジアム経営に携わることで得られる収入も「その他収入」に含まれるが、これに「入場料収入」と「物販収入」を合わせても、85.2%の伸びを示した「スポンサー収入」には遠く及ばない。