体操塚原、オーストラリアの五輪代表へ ── 塚原の飽くなき挑戦
懸念されるのは選考委員会にかけられた場合、塚原が日本からの帰化選手であるという点が、マイナスと見られるかもしれないということだ。現時点では見当たらないが、自国生まれの若い有望株が出てくれば、オーストラリア選手権で塚原が優勝しようとも若手選手を推す声が出て来ないとは限らない。 塚原自身は、「まずは来年の世界選手権(英国グラスゴー)に出て、今度こそ個人総合の決勝に残りたい。その壁を乗り越えることが当面の目標になる。自分としては、五輪に出るだけではなく、トータル的な実力をつけることを重要視している」と、今できることを全力でやろうとしている。 今後は、まず11月1、2日に東京・代々木体育館で行われる全日本団体選手権に朝日生命男子体操クラブの一員として予選から出場する予定。世界選手権前に痛めた左肩がしっかりと回復していれば、得意のつり輪で高得点を稼げるとあって、演技の出来映えが注目される。 昨年8月20日には長男が誕生した。「リオ五輪に出場すれば長男にはぜひ現地で試合を見させたい。そのころにはもう3歳なので、父親がやっていることは分かると思う」と“夢”を語る。 塚原の父は1968年メキシコ五輪から1976年モントリオール五輪までの五輪3大会で5つの金メダルを獲得した塚原光男氏。しかし、塚原が生まれた1977年以降は五輪には出場しておらず、塚原の記憶に残っている体操選手としての父の姿は、テレビで繰り返し映される「鉄棒の月面宙返りの選手」だった。 塚原の野望の根底には「五輪に3度出場した父を超えたい」との思いがある。リオ五輪に4度目出場するとなればアテネ以来12年の時を経ての悲願成就となる。 (文責・矢内由美子/スポーツライター)