アサヒ飲料が導入した「2年目リフレクション研修」、その狙いと内容とは?
■ モチベーション曲線の共有 事前の課題として、新入社員には上図(図表6-2)のような「モチベーション曲線」を作成してもらう。これは、入社時から現在までの自分自身のモチベーションの変動を曲線で可視化したものである。 モチベーション曲線を作成することで、自分がどのような時にモチベーションが上がるのか、あるいは下がるのかを把握することができる。また、同期とモチベーション曲線を共有し合うことで、自分自身の状態を客観的に認識することができる。 新人は、個人人格と組織人格のバランスが取れず、個人人格におけるモチベーション問題がダイレクトに組織人格の役割演技に影響を与えることとなる。この時に大切なことは、まずはモチベーションに左右される原因を知ることだ。そしてそれは、個々人によってその原因は異なるため、自分の特性を知ることも大切なのである。 ■ コントロールできる・できない領域を理解する アメリカの精神科医であるウィリアム・グラッサー博士が唱えた「選択理論心理学」の考え方をベースに、「変えられるもの」と「変えられないもの」を分けて捉えることを学ぶ。人はつい「変えられないもの」にとらわれてしまうが、「変えられるもの」にエネルギーを集中させることが、自分自身をコントロールするうえでの第一歩になる。例えば、以下のような観点がある。 ・自分vs.他人 人間はともすれば、他人を変えてやろうと意気込むものだが、これは簡単なことではない。そもそも「他人を変えることは無理だ」という前提に立つことが大切だ。他人を変えることができないのであれば、まず自分から変わる。その結果として、他人に対しても変化を促すことができるのだ。
・思考・行動vs.感情・生理反応 人間の感情や生理反応は制御することができない。だが、思考や行動なら変えることができる。思考や行動を変えることで、感情に振り回されることなく、ある程度、「自分」をコントロールする術(すべ)を身に付けることができる。 ・未来vs.過去 過去を塗り替えることは不可能だが、未来はこれから創っていくことができる。結果ではなく、先を見据え、未来を変えるために今どうするかが重要だ。 研修では、これを通じてモチベーションが左右する原因を体感的に把握するのである。多くの新人は、すべての事象にある様々な要素を混在して捉えてしまうことで、いわゆる“変えられないもの”に囚われることになる。大雑把に仕事やそれに向き合う自分自身を捉えるのではなく、上記のように切り分けることで、”変えられないもの”に囚われずに冷静に向き合えるようになる。 ■ 思考を切り替える方法を習得する 思考を固定せず、切り替えた視点で物事を把握することの重要性を理解するために、視点を切り替えられる観点として「スイッチ&フォーカス」のテクニックを学ぶ。 ・タイムスイッチ 「時間」を短期⇔長期、過去⇔未来と切り替えることによって思考を切り替える。 ・ズームスイッチ 「視界」を低⇔高、狭⇔広と切り替えることによって思考を切り替える。 ・ゴールフォーカス 「ゴール」に立ち返り、目的視点から現状を見る。 ・チャンスフォーカス 隠されたチャンスに目を向け、チャンスの視点から現状を見る。 ・リスクフォーカス 奥に潜んだリスクの視点から現状を見る。 モチベーションが下がった時、あるいはやる気を失ってしまった時は、まず自分自身の「思考」を切り替えることが有効である。客観的な視点から現状を捉え、変えることのできる自分自身の「思考」に今後の選択の焦点を絞っていく。 そのうえで、自分自身の「行動」を切り替える。「スイッチ&フォーカス」のテクニックを活用して自分自身の「思考」「行動」を切り替えていくことが、自分自身をコントロールし、ポジティブな選択を積み重ねていくことにつながるのだ。 このように、最後は「思考」「行動」といった自分自身の変えられる要素を、さらに具体化することで次なる一歩を明確にすることができるのだ。いわゆる目の前の仕事に対して捉えるべき「思考」や取るべき「行動」を日々実践できるまでブレイクダウンし、「仕事をスモールステップにする」ことでモチベーションの低下を防ぐのである。