「よく3回無事に帰ってこれた」野口飛行士がJAXA退職会見(全文2)
余力はあると思っている
アメリカで、特に宇宙飛行士の中で時々話すことですけど、宇宙にいるといろんな形で危険がいっぱいあるので、million ways to die, one way to surviveっていう。宇宙にいると死ぬことは、いろんな理由で死んでしまう危険な場面はあるけれども、帰ろうと思ったら自分たちの宇宙船に乗って全員で帰ってくる、その1つしかないと。だからmillion ways to die, one way to surviveの中で、よく3回無事に帰ってこれたなと。 3回目終わって帰ってきたときに、やはり船外活動の最後の4回目は、本当に宇宙ステーションの一番端っこまで行って、この先終点というか、この先、死っていうところまでいけたので。もう、1つは、そういう場面にいかなくてもいいんじゃないかなっていうのが1つありますね、やっぱりね。ここから先はそれを伝えた上で新しい展開をしていこうと。それを燃え尽きと言えば燃え尽きなのかもしれないですけどね。 そういう意味で3回終わったところで新しい展開をするのに余力があるかどうか、余力はあると思ってますけども。なので、そのまま余力がなくなるまで、この大変温かいJAXAという組織で過ごすのか、新しい展開をしていくのかっていうのは1つ判断で、僕としてはここで一気に違う景色を見にいくっていうのもいいんじゃないかなと。コロンビアのことは忘れないですけど、ただ、彼らの遺志を継いでいく人たちはもう若い人たちっていうか、後輩飛行士たちにつないでいいんじゃないかなというふうに思ったというのがあります。 テレビ東京:ありがとうございました。 司会:じゃあすいません、奥の。はい、どうぞ。
退職の背景に国際情勢の影響はあるのか
記者:どうも。ありがとうございます。フリーの【サトウ 00:34:43】と申します。野口さんが今回JAXAを辞められるっていう、その動機のメインではないにしても、背景には、このウクライナ情勢、ロシアがウクライナに侵攻した、侵略したという、そういう国家の戦いっていうんですかね、そういうものがあったのかなっていうことをちょっと推測してるんですけれども。 というのは、国単位での宇宙開発が非常にやはり1つの国家対立になっている部分があると思うんですが、月面探査でもですね。ところが野口さんはJAXAの中で1つの国を超えた輪を、ロシアも含めて、アメリカ、日本、つくってきて、おいしいものを一緒に食べながら友情を育んできた、そういう方だと思うんですよね。 そういう方が、JAXAの中で引き続き世界の連携っていうか、平和を目指した宇宙開発でなく、民間に飛び出していくっていうところが、何かやっぱり1つの新しいチャレンジに向かおうと思ってるんじゃないかなと思うんですけれども、フリーになってからのそういう世界平和っていうんですか、国境を超えた宇宙飛行士を育てる意味の何か抱負みたいなのがあれば教えていただきたいです。 野口:ありがとうございます。サトウさんもずっと追っ掛けていただいて、そういう意味ではフリーになられた先輩としてまたいろいろと、サラリーマン時代にはない展開というのがきっとあると思うので、お話を伺いたいと思いますけれども。今言われた国際情勢そのものは、実はそれほどは影響してないというか、この今の国際情勢に入る前から、この転身というか、区切りを付けようっていうのはあったので、ショートアンサーとしてはノーです。直接は影響してないです。 ただ、一方で宇宙飛行士の仲間たち、OB、OGの人たちとの接点という意味では、私、現役時代からすごく、おかげさまで縁があってですね。世界宇宙飛行士会議の皆さんとずっと活動を共にしてた時期もありますので、まさに国境を超えて、ある意味、今はもちろん非常に大変な時期であるのは間違いないですけども、宇宙飛行が始まった時期というのはまさに東西冷戦で、非常に厳しい国家対立、陣営対立の中で生まれてきた産業でもありますので、そういったところは常に避けれない運命に、宿命にあると。