知名度ゼロからの大逆転――断酒から5年、地獄を見た地下芸人がつかんだ「チャンス」
生きているというのは、全部誰かに見られている
断酒当初はつらいことも多かった。 「居酒屋で『自分はコーラで』と言うのが嫌でしたね。でもしゃあない。今となるとあそこで我慢できてよかった」 一度芸人として死んだつもりだからこそ、少しでも世間の役に立ちたいと、道に落ちている「たばこの吸い殻」掃除を始めた。ふと、誰かに見られているような気がした。その瞬間、「自分は試されているのだ」と思ったという。 「不思議ちゃんに思われるかもしれないけど、本当に神様に見られている気がして。生きてるというのは、全部誰かに見られているんだと気がついたんです」 断酒と吸い殻掃除を続けるうちに、大きな仕事がどんどん決まった。酒とたばこさえあればホームレスになっても生きていけると思っていた自分はもういない。お笑いを頑張ることで生を実感できるようになった。 「中学のときに『うめだ花月』で初めて見た間寛平さんや、明石家さんま師匠やダウンタウンさんに力をもらったんです。いじめられたり、ちょっとつらい気持ちを抱えたりしている子どもたちがいたら、僕に何かできたらええなって思っています」
あなたはもっとお笑いを頑張りなさい。チャンス大城を見守るチャンスの神様はきっとそう言うことだろう。
――――――― チャンス大城 芸人。1975年、兵庫県尼崎市生まれ。中学3年で大阪NSCに入るが退所し、定時制高校に通う。その後、再びNSCに入り芸人を志す。上京後は地下芸人を経て、現在は吉本興業所属。昨年7月に半生をまとめた『僕の心臓は右にある』を上梓。 キンマサタカ 1977年生まれ。大学卒業後、出版社に就職。15年に独立。写真家としても活躍。著書に『痛風の朝』『文春にバレない密会の方法』など。