東京下町、うまい「絶品そば」ベスト5軒…具たっぷり、風情よし《上野・浅草橋・日暮里・谷中・本所吾妻橋》の老舗を大公開
店主家族のお人柄、重ねた年月の粋な味、麺に丼とお腹いっぱい庶民の味方。おいしいだけじゃない、漂う空気さえ楽しめる下町の名店をふらり訪ねてみませんか。 【写真】手仕込みのカレールウがうまい…東京下町の老舗そば店「絶品の一杯」
上野『翁庵』
町場の蕎麦屋は心のオアシスのような存在かもしれない。店主家族のお人柄、重ねた年月の粋な味、麺に丼とお腹いっぱい庶民の味方。おいしいだけじゃない、漂う空気さえ楽しめる下町の名店をふらり訪ねてみませんか。 威風堂々たる日本家屋は、一歩入れば昭和の薫りに満ちている。今は珍しい船底天井に飴色の柱……「翁庵」は町蕎麦の鑑のような店だ。創業は明治だが建物は昭和初期の面影を残したもの。粋な風情も"味"となる。 品書きがまた清々しい。酒は松竹梅1種、つまみは少数精鋭。一方、食事は蕎麦にうどんに丼物と気取らぬ味が勢揃い。中でもツユに長ねぎとイカのかき揚げが入る「ねぎせいろ」は店の看板だ。 戦時中、高値で手に入らなかったエビの代わりにイカを使って揚げてみたらそれが評判になったとか。ツユがしみた衣も乙で、上品な色と細さにこだわる二八は喜んでもらえるようにと盛りもすこぶるよし。加えて通し営業。いつでも誰でも受け入れてくれる、懐の深さがある。
浅草橋『生蕎麦すぎ栄』
店前には使い込まれた出前用バイク。丼を乗せたお盆を何段も積んで運ぶ店主を見ていれば、地元で愛される店だとすぐわかる。「小学生の頃からエビの殻剥きなど手伝っていて、出前は中学から」と笑うのは2代目だ。先代がこの地に店を構えて54年。名物は多いが、手仕込みのカレールウを使った蕎麦はぜひ試して。 小麦粉をラードで炒る作業から手間暇かける昔ながらの手法で、和ダシの奥からスパイシーな香りが花開けば心地いい陶酔。自家製蕎麦は企業秘密の割り粉を2種用い、のど越しとコシを大事にするそう。 王道なら天ぷら蕎麦。熱々のエビ天をのせるやジュッ。音と共に運ばれると皆喜ぶとか。ちなみにご近所への出前は1品からでも。「高齢の方も多いですからね」。下町人情に泣けてくる。
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