東京下町、うまい「絶品そば」ベスト5軒…具たっぷり、風情よし《上野・浅草橋・日暮里・谷中・本所吾妻橋》の老舗を大公開
日暮里『そば処大宝家』
ビルが建ち並ぶ日暮里駅すぐ近くに、こんな居心地のいい町蕎麦があったとは。創業は昭和32年。現在の店を仕切る3代目は継ぎ足しのかえしなど代々継承する味の原点を守りつつ、新しい挑戦も日々続けてきた。 そのひとつが香り蕎麦。柚子切りは秋~初春まで登場する季節物で、同じく時季を迎えた牡蠣と味わう天もりは今まさに光を当てたい名作だ。 高知産の柚子の皮をすり、更科粉に加えて打つ蕎麦は実に上品で爽やか、三陸や広島など厳選した牡蠣はふくよかな旨み、旬を味わう喜びがある。またうれしいことにつまみも多彩で、自家炊きにしんや国産の鴨焼きは秀逸。厨房に目をやれば数年前から共に働く4代目の熱心な姿もあり、歴史が続くうれしさについつい杯も進むのだ。
谷中『松寿庵』
谷中七福神のひとつ、長安寺の並びにあるこちらの人気は「七福神そば」。 丼に神様大集合とは何とも縁起がいいですな。40年以上前の創業時、他にない目玉を作ろうと思い付き、地元七福神に「店で出していいか」と聞いて回って誕生したんだそう。 恵比須様がエビ、大黒様は背負ってる袋にちなみ袋茸、と各々を見立てた具は肉に野菜と盛りだくさん。店内に貼ってある説明を見ながら巡る、いや食べるのも楽しい。やさしい旨さは80代の店主夫婦と娘さんの地道な仕事から。 長野産蕎麦粉で毎朝仕込む蕎麦はするする吸い込まれていく細さが特長だ。ツユもカツオ節を節のまま茹でて削って丁寧にダシを取る。七福神も家族の努力も集結したこの一杯、食べればほっこり福を呼ぶ。
本所吾妻橋『手打ちそば処言問やぶ』
昼下がりに訪れるとご主人が蕎麦打ちの真っ最中。「朝仕込んだ分が出ちゃって。週末は1日3~4回打つこともあるんです」。無駄が出ないよう少量ずつを誠実に。「お待たせすることもあって申し訳ないけど」。いやいや逆に常に打ちたてとはありがたや。実は昔は機械打ちだったが、よりおいしくと手打ちに替えたそう。 二八の蕎麦はやや太め、噛み締めれば香り膨らむ素朴な味だ。天ざるはたっぷりの刻み海苔もうれしくて、上質な胡麻油で揚げたエビも風味抜群。すると女将さん「油がいいからたぬきもおいしいのよ」。 そのたぬきも選べる人気のカツ丼セット、大満足の量と旨さにじーん。つまみは女将さん担当で、店は二人三脚で明るく切り盛り。下町の蕎麦屋は仲良し夫妻の名劇場だ。 …つづく「東京のうまい「最強の町寿司」ベスト7軒…高コスパ、一貫《110円》からで一見さん、ソロ活でも大丈夫「覆面調査隊が実食」」では、庶民価格の美味しい町の寿司店を紹介します。 『おとなの週末』2023年12月号より(※本内容は発売時のものです)
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