「緊急事態宣言」と「日本特有の飲食店コミュニケーション文化」
東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県を対象とする緊急事態宣言が発出されました。実施期間は今月8日~2月7日。飲食店に営業は午後8時までとすること、酒類の提供は午後7時までとすることを要請するなど、昨年4月の同宣言と比べると飲食に集中した対策となっています。 「なんとしても感染拡大を食い止める」 菅首相、1都3県に「緊急事態宣言」発出 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は「会食をターゲットとした緊急事態宣言には合理性がある」とする一方、日本特有の飲食店コミュニケーションの文化にダメージを与えることを危惧しているようです。若山氏が独自の「文化力学」的な視点から論じます。
会食の禁断症状
どうやら人は「会食」をやめられない、というより「会食にともなうコミュニケーション」をやめられない。今の日本人はいや世界の人が、その「禁断症状」を呈しているようだ。 1都3県に緊急事態宣言が出され、政府・与党は、休業要請などに応じない飲食店などの事業者への罰則と協力金をセットとする特別措置法改正を急いでいる。「遅すぎる」という声もあるが、一方、罰則規定の導入は私権の制限につながるという「慎重論」もある。 第1波では人の接触の量を抑えることでそれなりの効果があった。第2波、第3波では、飲食店におけるマスクなしの会食による飛沫が問題とされながら、危機意識がうすれて自粛が徹底しなかった。 もっとハッキリした制限をかけろという声に、政治家は判で押したように経済とのバランスを口にする。しかし感染爆発による医療崩壊が起きてしまえば、数週間の経済ダメージどころではない。他国の例を見ても抑え込めば早く経済が回復するのだから、危機に臨んではむしろバランス論が経済を悪化させるのだ。その意味で今回の、会食をターゲットとした緊急事態宣言と特措法改正には合理性があると思われる。 個人的にはもっと早く徹底した対策を取って欲しかったが、今のマスコミにおけるそういった議論は、感染が広がったあとの結果論とも聞こえる。そしてここで考えてみたい。人はなぜ会食をやめられないのか。われわれが本当に守るべき会食の場とはどういうものなのか。 人と会わないということが、仕事や教育に大きく影響することは当然だが、それはテレワークやオンライン授業で乗り切ろうとした。しかし娯楽や余暇の部類に入る「会食」をやめることは簡単ではなかった。一種の「禁断症状」を呈するのだ。人間とはそんなものなのだろう。