「命が惜しければやめなさい」出会い系SNSを甘く見る日本の若者、豪州との決定的な違い
闇バイトの本当の指示役は海外に拠点や大きな隠れ家を持ち、相当な闇情報を共有できる能力を持っています。幼児や若い女性の誘拐、人身売買など、海外で起こっていることは、人を信じやすい日本人相手ならば、すぐに被害範囲が広がるでしょう。 今までこうした犯罪を防止していたのは、日本のコミュニティの監視力の強さと、極端に貧しい犯罪予備軍が少なかったことです。しかし、その前提はもう崩れました。 私はメディアの人間ですから、表現の自由も知る権利も大事だと思っています。しかし、この二つについて言えば、子どもの場合はSNSがなくても、十分に既存のメディアでそれらを確保できるはずです。 高校生と高校生の子を持つ保護者のそれぞれに対し、SNSの利用について保護者と話し合ったりルールを決めたりしているか尋ねたところ、「大いにそう思う」と「どちらかと言えばそう思う」を合わせた「そう思う(ルールを決めている)」と回答した割合が、保護者は51.3%と過半を占めるのに対し、高校生は31.0%に留まり、20.3ポイントの乖離がありました。 つまり、保護者はSNSの利用について話したりルールを決めたりしていると思っていても、高校生は適当に聞き流している可能性が高いのです。 たとえば「裏アカ」です。本人が「複数アカウント(複アカ)」を持ち、その一つを「裏アカウント(裏アカ)」として利用しているケースが相当あります。前出のアンケートによれば、アカウント数を尋ねると、「2つ」と回答した割合が33.1%と最も高く、複数保有している割合は全体で73.5%もありました。しかも、複数アカウントを保有している割合は男子よりも女子の方が多く、女子で1つと回答した割合は17.9%しかありませんでした。 ● 注意してもなかなか伝わらない 被害を防ぐ最も合理的な手段 私はオーストラリアのように、子どもや親でなく、運営会社を処罰するという方法は極めて合理的だと思います。今回実態を調べて、私自身も恐ろしくなりました。私は大学勤務時代、女子大生のマッチングアプリ利用の実態を目の当たりにしてきました。複数のアカウントを持ち、それを友人同士で共有して、10人以上の異性とやりとりし、勝手に友人のアカウントでメッセージを送ったりしている1年生たちもいました。 私は「いつか殺されるからやめなさい」と実例を挙げて説明しましたが、まだ18歳。性犯罪者やストーカー行為の怖さがなかなか理解できません。今や就職活動する学生の「裏アカ」を調べて、面接ではわからない裏の顔がないか、調査を請け負う会社さえ出てきています。政府に任せず、まず親が働きかけを始める時期だと思います。 (元週刊文春・月刊文藝春秋編集長 木俣正剛)
木俣正剛