【密着】歌舞伎町で70年、路地裏の「人情食堂」……お客たちの“マル秘”人生 大都会の「心のよりどころ」に『every.特集』
■小林さん「落ち込みがすごかった」
清掃ボランティアに熱中するあまり妻が出ていってしまった小林さん。自宅にお邪魔して話を聞きました。 小林さん 「初めは彼女が去ったことに対する自分の落ち込みがすごかったですね。ポカーンとして、オレ何してんやろうって思いましたけどね」 この頃の小林さんは、精神状態がかなり不安定だったいいます。2023年9月~翌年5月は失業手当を受給しました。「無職になった自分、ハローワークに頼らないといけない、申請に行く自体が自分の中で許せなかった。あのモチベーションを上げるのは難しいですよ」 プライドが邪魔をして、ハローワークに行くのもつらかったとか。 妻が出ていくと、さらに清掃活動にのめり込んだといいます。「そこから、多分考えないで逃げているだけかもしれない。だから、これ(清掃活動)に没頭することによって疲れ切って帰ってサッと寝る。また朝起きて、その繰り返しかも…」
■女将さんの温かさで気づいたこと
誰にも打ち明けられず悩みを抱えていた小林さんを、女将さんは黙って受け止めてくれたそうです。 小林さん 「あの人の引きずらない、あっけらかんとした、受け入れてくれる懐の深さというか、おおらかさには癒やされるものがありますね」 その温かさに触れるうち、家族のありがたさに気づきました。「妻にはさびしい思いをさせていた」。1人になった部屋で、ようやくそのことを悟ったといいます。 小林さんが、冷蔵庫の中を見せてくれました。輸入チーズがいっぱいあります。「ほぼほぼチーズです。これがコンテ(フランス産チーズ)ですね」。いつかもう一度、輸入食材の仕事をしたいと動き始めていました。
■「なくなったら困る」の声が励みに
女将さん 「何かここへ来るとほっとするんだよね、こういう店は大事だよ、なくなったら困るよって言ってくれたんで、じゃあもうしょうがない、頑張ろうかみたいな」 人情食堂「ひょっとこ」は、都会で働く人たちの心のオアシス。そこに集まる人たち、それぞれに物語があります。 (12月26日『news every.』より)