【密着】歌舞伎町で70年、路地裏の「人情食堂」……お客たちの“マル秘”人生 大都会の「心のよりどころ」に『every.特集』
■亡き夫と目指した「心のよりどころ」
ひょっとこは70年以上続く定食の店。女将さんの亡き夫、茂さん(没年74)は16歳からここで修業しました。隣の店で働いていた女将さんと出会い、結婚。その後、店を引き継ぎました。以来、寡黙な夫に代わって女将さんが接客を引き受けてきました。 女将さん 「『ここへ来ると何でもお話しできるねって。そういう感じのお店にしたいよね』と(夫は)言ってましたね」 2人が目指した店は 「心のより所」。歌舞伎町で働く人や、ワケあって故郷に帰れない人たちの心とお腹を満たしてきました。
■40年来の常連客、思い出話に花
夕方。40年来のご贔屓で、夫の茂さんをよく知る女性が来ました。ちかこさん(65)です。 ちかこさん 「茂ちゃん茂ちゃんって、なんで茂ちゃんなの? マスターとか大将とか…」 女将さん 「言わなかった。みんな茂ちゃんって言ってたよね」 ちかこさんは店が混んでくると厨房に入り、手伝い始めました。10年ほど前までは、歌舞伎町のクラブの売れっ子のホステス。今は朝8時から(夕方)4時まで、病院でパート勤務。仕事が変わっても、ずっと新宿で働いています。女将さんと思い出話に花が咲きます。 女将さん 「夜12時過ぎはホステスばっかりで」 ちかこさん 「遅くまでやっていたからね」 女将さん 「ミーティング弁当もやってたよね」 女性 「ミーティング弁当はすごかった。ミーティングをやる時に10人だの20人だの、全部ここから持っていくわけ」 クラブのホステスたちに人気だったというミーティング弁当。のりは醤油に浸した2段重ねで、おかず満載の梅弁当です。税抜き1100円という値段は40年変えていないとか。
■独身時代からの常連は娘とデート
夕方5時半。娘と遊園地に行った帰りに寄ったという親子が来店しました。「娘を連れてきました!」。父親は、歌舞伎町で働いていた独身時代からの常連。今は、歌舞伎町で飲食店を経営しています。 女将さんが「あれ、2人? ママは?」と話しかけると、男性は「今日は仕事です」と答えました。 男性 「お肉は食べられないんですよ、この子。お野菜をなんか適当に」 女将さんは、肉が苦手という女の子に、野菜の煮物を盛り付けました。娘さんは「いただきます。おいしい!」とうれしそうです。 男性 「(今日は)デートです。この間(久しぶりに)1人で来て、(女将さんに)今度娘さんを連れてきてと言われたから、約束を果たしに来たんです。若い時よく来てたんで。お袋の味みたいなね」 娘さんは「顔赤いね」と笑います。娘の前ではパパもタジタジです。