1年半で250万円貯めた「貯金オタク」が罪悪感を手放し、欲しいものを買うようになるまで【体験談】
会社員で副業漫画家の小日向えぴこさん。あることをきっかけに、節約に目覚め、1年半で250万円貯めることに成功します。ただ、お金は貯まっていくのに、なぜかしんどさを感じるようになって……。ある日、友人からもらった5000円のハンドソープをきっかけにお金を使うことへの考え方が大幅に変わります。その経緯が描かれている『貯金オタク、5000円の石けんで目覚める。 金は生きてるうちに使い切れコミックエッセイ』(はちみつコミックエッセイ)。節約生活や価値観の変容について、小日向さんにお話を伺いました。 〈漫画〉『貯金オタク、5000円の石けんで目覚める。 金は生きてるうちに使い切れコミックエッセイ』より ■ハードな節約生活をしていた ――かつてはかなり節約を頑張っていたとのことですが、どんな節約をしていたのでしょうか。考えや意識で大事にしていたことはありますか? 最初に目標を決めています。家計簿から今自分がどれくらい使っているかを確認し、いくら貯められるかを考えてギリギリのラインで目標設定しました。私の場合、月7万円貯めたくて、5万円を先取り貯金し、2万円はやり繰りの中で貯めていました。 出費を減らすためにしたことは、固定費の見直しです。家賃の安いところへ引っ越しをしたり、スマホを格安SIMに変更したり、保険の見直しをしたり。食事はもちろん自炊で、安い食材しか買わないようにしていました。食費は月に1万2000円に設定。安いスーパーで安いものしか買わずに自炊をすれば無理ではなかったですが、外食は一度もできませんでした。お弁当も頑張って持って行って、会社の人たちがランチに行くときに自分だけ断っていました。 毎日のように残高を眺めて、ゲーム感覚で節約にのめりこんでいって。節約が趣味でした。嗜好品は徹底的に買わないようにしていましたね。 節約を始めたとき、社内で職種変更によって、月給が10万円下がったこともあって、心の底から「貯めないとまずい」と思ったので頑張れました。結果、7万円×18か月と、ボーナス3回分で1年半で計250万円貯めることに成功しています。 ――生活必需品以外はどうしていたのでしょうか。 友達とクリスマスパーティーをすることになったときは、何も渡さないわけにはいかないので、当時は「仕方なく」という気持ちで準備したことがありました。ただ、この件に限らず、人にプレゼントするタイミングで「なるべく費用を抑えなければ」と思っている自分と、「なるべく良いものをあげたい」と思っている自分がいて葛藤があったのも正直なところです。 自分のためにお金を使うことはほとんどなくて、服も欲しいか欲しくないかではなく、必要かどうかが基準でしたし、買ったとしても安いものだけ。コロナ前で普通に出社していた頃でも、同じ服を着て出勤していたことが多かったです。 節約モードのままコロナ禍に入り、節約できてちょうどいい!と思っていました。育児が始まった頃でもあって、「自分にお金をかけなくてもいいや」という感じにもなっていましたね。 ■5000円の石けんに衝撃を受ける ――その後、ご友人からもらった5000円の石けんがきっかけで生活の見直しをされていますが、5000円の石けんはどんな印象でしたか。 高いものはオシャレなイメージなどブランド名で高いだけだと思っていたのです。でも使ってみて、質も良いものだと知って衝撃を受けました。今まで買ったことがなかったので知らなかったんです。もしかしてみんなはこういうことにお金を使っているのでは……?と思い始めました。 その後、少しずつ必要なものを買い足していったのですが、そこでびっくりしたのが、物を買うことがすごく気持ちがいいということ。 今までうっすら「欲しい」と思っても、お金がないからとか、今使っているものがまだあるからとか、買わない理由を並べ、我慢して買っていませんでした。物が手に入ることもですが、脳内にある「あれを買いたい」という気持ちを解消できるので、脳内にあるタスクが一つ消えるような感覚が気持ちよかったです。それでもっと色々なものを買ってみようと行動が変化しました。 ――物を買って得られる快の感覚は、節約生活を始める前後で違いはあったのでしょうか。 節約をする前はあまり考えずに買っていたので、物を買うことでの気持ち良さを感じていませんでした。我慢した生活を経たからこそ、物を買うことの気持ち良さを覚え始めたのだと思います。同じものを買うとしても、自分の中にストッパーができたので、それを外すときに、何かを感じるようになったのだと。 今は「今日は頑張ったから」「誰かにプレゼントするから」など、理由をつけて買うのですが、そうしたハードルがあるので、何かしら買うと記憶に残りやすいのだとも思います。 ■買う理由を考える ――どうやってお金を使うことの罪悪感や抵抗感を手放していけたのでしょうか。 「買ってよかった」と思う経験の積み重ねがありました。買うときに理由をつけるようにすると罪悪感が少し減るので、理由をつけるようにしている部分もあります。 それからライフプランを立てたのも大きかったです。私は理論的に考えるのが好きで、「お金を使っても大丈夫」という確証を得るためには、根拠となる数字が欲しかった。計算上は意外と使っても大丈夫なことがわかったので、お金を使うことの罪悪感が減りました。 ――買うときには理由をつけているとのことですが、必要な支出と無駄遣いの境界線はどこにあると思いますか? よく支出には、「消費」と「浪費」と「投資」があるという話を聞きます。消費は洗剤やお米など生活に絶対に必要なものです。投資と浪費の境界線は難しいのですが、私は目的の有無と未来の役に立つかが境界線だと思います。 漫画を描くときに、よく喫茶店に行って作業をするのですが、家だと子どもがいて集中できないですし、場所を変えると集中できるので、漫画を描くという目的があって、かつそれは未来に役立つことなので、喫茶店代は「投資」だと捉えています。なんとなく喫茶店に入ってケーキを食べることは浪費だと思いますが、私は浪費が絶対にダメなものとは思っていないんです。 たとえば私はコンビニのレジ横にあるチキンが好きで、コンビニへ行って金額や健康的にもう少し罪悪感のないもので代替できないか5分くらい悩むんです。途中で「家にあったアレを食べればいい」と思い出すこともあります。それでも食べたかったら買うようにしています。 大事なのはバランスです。支出のうち、たとえば浪費が5割を占めるのであれば、見直した方がいいと思いますが、1~2割程度、自分の楽しみのためにお金を使うことはあってもいいと考えています。決めた金額の範囲で浪費をすることは、心のリフレッシュのためにも必要なことではないでしょうか。 ※後編に続きます。 【プロフィール】 小日向えぴこ(こひなた・えぴこ) 会社員・漫画家。2020年、育休をきっかけに漫画を描き始め、2021年から副業漫画家になる。主にWEB連載や、広告漫画にて活動中。本業でもSNS投稿用の漫画・イラスト制作や、バナーデザインなどを手掛ける。FP(ファイナンシャルプランナー)の資格を持っており、家計のことを考えるのが得意。好きな食べ物はお寿司。コミックエッセイ描き方講座5期生。 ■X(旧Twitter):@epico428 ■Instagram:@epico428 インタビュー・文/雪代すみれ
雪代すみれ