ピンクのネイルで放つスリーポイントシュート…“負けず嫌い”が挑む二度目のパラリンピック 車いすバスケットボール柳本あまね
日本代表でも試合に出られないジレンマ
2014年、高校1年生で初めて日本代表に選出される。しかし試合にはなかなか出られなかった。「ベンチウォーマーの時期がずっとありました。ものすごく悔しかった。試合に出られる選手と自分は『何が違うんや?』と思って。ディフェンスは好きだったし、スピードもスタミナも負けていなかった。じゃあ確実な差はシュート率だと思いました」 そこから他の選手の動きを分析して、シュート率を上げる工夫を積み上げていった。「めちゃくちゃ練習しました。スタメン取れればパラリンピックへ行ける!と」その努力が実り、2大会連続でスタメンに入った。
挫折をターニングポイントにした“負けず嫌い”
だがその後、リオパラリンピック予選大会のメンバーから落選。バスケットをやめたいと思うほど落ち込んだ。「めっちゃ悔しくて。大会も見られなかった」だがこの挫折が大きなターニングポイントとなった。さらに練習量を増やして目標に向かっていく。 「シンプルに負けず嫌いが出た(笑)。やっぱり負けず嫌いなんです。『もうあの思いを絶対にしたくない!』と。メンバーに落ちたからって、パラリンピックという目標が消えたわけではないし、『よし、また頑張ろう!』と切り替えました」
スリーポイントを世界レベルに
カギとなるのはやはりシュート成功率だ。「精度を上げるために、体幹トレーニングやピラティスにも取り組みました」 さらにシュートフォームも改善した。「以前は、自信のなさから助走距離を長くとり、スピードを出していましたが、逆に助走距離とスピードを抑えて、ラインギリギリから真上に放るように変えました」 シュートの成功率は上がり、スリーポイントシュートにも磨きをかけた。2023年の世界選手権ではスリーポイントシュートの個人ランキングで2位に。「スリーポイントは、間違いなく私の武器です。それが自信です」
さらなる進化で東京からパリへ
東京パラリンピックでは、全試合でスタメンの座を勝ち取った。「リオでの挫折を経験した私にとって、めちゃくちゃデカかったし、大きな自信になりました」 次のパリ大会に向けて、さらなる成長をとげようとしている。「今はガードを任されていて、コーチからもキャプテンからも『あまねらしくやってくれたらいいよ』って言ってもらって」ガードとはオフェンスを組み立てるいわば司令塔。重要なポジションだ。 「最終予選では自信を持って指示を出せたり、自分が迷いなく打てたりしましたし、パスのタイミングなんかも、ガード力という点ではちょっとは成長してるかな、と。自分のためにとか、自分が得点するためにとかではなく、チームのためにどれだけ自分が貢献できるか、そこにシフトチェンジしています」 その表情は、チームを牽引する中心選手のものだ。