“ファスナー合流”は長山先生が提唱者だった⁉ |長山先生の「危険予知」よもやま話 第28回(後編)
JAF Mate誌の「危険予知」を監修されていた大阪大学名誉教授の長山先生からお聞きした、本誌では紹介できなかった事故事例や脱線ネタを紹介するこのコーナー。後編は高速道路での合流と優先関係の話。1台ずつ交互に合流する“ファスナー合流”は長山先生が提唱者だった⁉ という驚きの話が出てきます。 【画像】ファスナー合流を図説(全4枚)
長山先生が“ファスナー合流”の提唱者!?
編集部:前編の記事で、前方で合図を出して進路変更しようとしている車がいた場合、それを妨害してはいけないという話が出ましたが、高速道路で合流する場合にも同じようなルールはあるのでしょうか? 長山先生:前編でお話したのは、交差点などで右左折しようとしている車に対するもので、高速道路での合流については、まったく異なりますね。 編集部:そうですか。時々、初心者ドライバーが高速道路に乗ろうとしたものの、うまく合流できず合流車線で止まってしまうことがあるじゃないですか。それを見たとき「ウインカーを上げて合流しようとしている車がいたら、合流させなければいけない」という法律があればいいと思ったのです。 長山先生:なるほど。ただ、合流できないような車はたいてい十分加速できていないことが多いので、そのような法律があると、かえって危険ですね。 編集部:それもそうですね。合流させようと減速したら、自分が追突される危険性がありますから。 長山先生:そうです。高速道路は文字どおり車が高速で走行しているのですから、その流れを阻害するような危険な運転は罰せられます。たとえば、道交法75条の6「本線車道に入る場合等における他の自動車との関係」では、本線に入ろうとする車が本線を走る車の進行を妨害することを禁じていますし、同じく75条の7「本線車道の出入の方法」では、本線に進入する場合、加速車線があれば、そこを通行して進入しなければならないとしています。 編集部:「十分加速して安全にスムーズに合流しなければいけない」ということですね。初心者にはハードルが高いですけど、安全を第一に考えれば、道理にかなったものですね。 長山先生:そのとおりです。ただし、渋滞気味の高速道路の場合、道交法とは別のルールが必要になりますね。 編集部:渋滞中ですか? 基本的に譲り合って1台ずつ交互に合流しますよね。でも、それはドライバー同士の暗黙のルールというかマナーであって、道交法にはないですよね。 長山先生:日本の道交法にはないですが、以前スウェーデンで合流の仕方が直感的に分かる看板を見たことがあります。昭和54年(1979年)なので、かなり昔の話になりますが、ヨーロッパ8か国の運転者教育・施設の視察のためスウェーデンに行ったとき、高速道路の合流地点の手前に下図のような歯車が噛み合った図形が提示されていて、見た瞬間に「歯車が噛み合うように1台ずつ交互に合流するのだな」と理解できたのです。 編集部:面白い表現ですね。日本の標識に慣れていると、「何のことだろう?」と理解できないかもしれませんが、交互に合流する動きをうまく表現していますね。 長山先生:これは正式な標識ではなく看板として掲示されていたのかもしれませんが、どのように合流すればよいのか直感的に分かる図で感心したものです。これを見て、日本で用いるなら、右下のようなファスナーを図形で表現したら良いと思い、私は当時盛んに講演や文章で「ファスナー合流」ということを唱えたものでした。 編集部:えっ! 「ファスナー合流」って、ドライバーの間でけっこう使われていますよね、発案者は長山先生だったのですか!? 長山先生:日本に関してはそうだと思います。最近インターネットを見ていると、「ファスナー合流」だけでなく「ジッパー合流」という言葉も盛んに運転者教育の中で使われているようですが、これらの命名の由縁は私のスウェーデンでの経験に基づくものなので、嬉しくもあり、誇らしくも感じたしだいです。 編集部:そうでしたか。でも、「日本に関しては」ということは、外国では“ファスナー合流”という言葉はあったのですか?