「3歳娘の“あちゅい”が耳にこびりついている」…東名女児2人死亡事故 両親の25年
保孝さん「合計7回、手術受けています。皮膚の移植手術。「5回目が、くっついていた左腕と脇腹を剥がす手術。これはかなりでかかったですね」 「眠らされてた時に奏子・周子が出てくる夢を見たんです。どこかの公園で階段を登っていく様子。時々振り返って『パパ大丈夫?』って言いながら気遣ってくれた」 「3月に初めて退院して帰ったときに子どものおもちゃがまだ置いたままだったんです。おもちゃを見たときに初めて号泣しました。もう子どもたちはいないんだ。もう二度と会えないんだという思いが本当につらかった」
悪質運転への厳罰化を求めて
弁護士の内藤秀雄氏。彼はかつて東京地検交通部の検事を務めており、その際、井上さん夫婦の事件の担当をした。 内藤弁護士「実は、東京地検に来て頂く前に、郁美さんは写真週刊誌の取材を受けておられました。私はそれを見て、少し驚きました。大体ご遺族の方は、一人でひっそりと、悲しみと苦しみ、悔しさに耐えていらっしゃるイメージがあったのですが、郁美さんは自ら取材を受けられて、ご自身やお子さんたちの写真を掲載させていた。私は郁美さんに『どうして取材を受けられたのですか?』と尋ねました。すると郁美さんは、『私は亡くなった2人の娘の死を絶対に無駄にしたくないんです』とはっきりと言われました。その言葉が今でもとても印象に残っています」 郁美さん「国が違えば多分殺人罪並みの厳しい法律が適用されていたかもしれない。でも、私は全く法律を知らない。何人死なせても懲役5年止まりだとも知らなかったし、交通事故が全て“過失”という言葉のつく罪でしか裁かれていないことも知らなかった」 内藤弁護士「正に、まれに見る悪質な事故が重大な結果を引き起こしたと感じました。被疑者はサービスエリアで飲酒をして、しかも、大型トラックを運転している。料金所で通行カードなどを出そうとした時に手元がふらついてそれを落として、車から降りて拾う時に、係員からふらついているという指摘を受けた。自らも足元がふらついていることを十分そこで自覚をしたうえで運転をして、この重大な事故を発生させた」 保孝さん「『加害者は、業務上過失致死傷の罪で裁かれるんですか?』と(担当の検事に)聞いたら『はいそうです』と。その最高刑を聞いたら『懲役5年です』と言われて」 内藤弁護士「実はこの事件の処理をする際に、交通部内で『未必的な故意による殺人もしくは傷害致死に問えないか?』という意見があったくらいです。しかしながらそれは故意というものを法的に厳密に判断するとやはり難しかったものですから業務上過失致死傷罪の最高刑である懲役5年を求刑することにしました」 2000年6月、東京地裁は懲役5年の求刑に対して懲役4年の実刑判決を言い渡した。 (当時を振り返って)保孝さん「1年減刑されたことに『なぜだ』という思いがずっとあった。判決理由を読んだ時に、『情状酌量の余地』と書いてあってどれをとってみても、もう我々にとっては納得できなかった」 郁美さん「一番、許せなかったのが、加害者にもその社会復帰を待ち望む妻子がいる。奥さんがいようが子どもがいようが、彼は生きているわけだから、何十年、刑務所に放り込まれても、戻れるだけまだいいじゃないか」