【イマドキの大学ゼミ】改ざん文書を見つける犯罪捜査や、がん治療にも レーザー光で「分子」の世界を解明
光を発する分子が「なぜ光るのか」
学生たちは一人ひとりのテーマを決め、1年かけて研究に向き合います。矢島さんの研究テーマは、「アザフルオランテン誘導体の光特性」です。 「アザフルオランテン誘導体は、学科内の有機合成化学研究室が新規合成に成功した化合物で、レーザー光を当てると強い蛍光を発する分子(蛍光プローブ)であることまではわかっています。そこで『この化合物がどのようなメカニズムで蛍光を発するのか、どんな性質を持っているのか解き明かしてみたい』と思い、研究テーマに選びました」 現在、矢島さんは7種のアザフルオランテン誘導体について、レーザー光を当てて分子が励起状態になると構造がどう変化するのか、どのくらい蛍光状態を保てるのかなどをさまざまな分析機器を使って調べています。 「光を発する分子なので、自分の目で変化を確認できてすごく面白い」と矢島さんは言います。研究を始めてからまだ2カ月ほどですが、これまでの分析結果から、7種の中に励起状態になるとねじれた構造を取るものもあれば、平面の構造を取るものもあるといった違いがあることがわかってきました。
「朝ゼミ」で知識を習得
研究活動を通じて、自身の成長を感じることもあるそうです。 「自分で目標を決め、それを達成するために計画を立てて進めていくという作業をしていく中で、だいぶ計画性や実行力が身についてきたような気がします」 1人で研究を進める中で、不安を感じたりしないのでしょうか。 「鈴木さんは最低でも一日2~3回は実験室に来て、『データは取れそう?』などと気にかけてくれます。このまま研究を進めて良いのか迷うこともありますが、困ったときはいつでも手を差し伸べてもらえる環境があるので、まずは自分なりに頑張ってやってみようと思えるし、安心して研究を進めることができています」 毎朝90分間は「朝ゼミ」といって、鈴木教授の講義を通して、光化学やスペクトル解析などの研究で使う専門的な知識を全員で学ぶ機会もあります。朝ゼミで学んだことがすぐに自分の研究に役立つことも多いと言います。 メンバーの仲が良いことも研究室の特徴です。 「朝ゼミだけでなく、誕生日会や打ち上げなど全員が顔を合わせるお楽しみイベントも多いので、孤独感を覚えたことはありません。研究テーマはそれぞれ違いますが、使用する分析機器は同じなので、学生同士で使い方などを教え合ったり、昼休みは雑談をしたり、メリハリをつけてみんなで頑張っています」